アートコレクターが集める作品が千差万別なのはもちろんですが、購入にいたるまでの経緯も人それぞれです。今回、紹介する高橋ゆうこうさんは、作品ごとに自分の情熱をたしかめながら購入するコレクターです。
「あくまでも『自分の家に飾りたい』という気持ちを大事にしています。良い作品だから買う、ということではなく、心を揺さぶってくるような感覚があるかどうか……と考えます。ギャラリーに行って気に入っても、一度帰って、やっぱり心から離れない、欲しいなと思ったときに買うことが多いですね」と話す高橋さん。作品によってはギャラリーを6回訪れたうえで購入したという経験もあるそうです。
アートコレクターのなかには、自分のなかで確たるテーマを持ち、それに沿って作品を集めている人もいます。 いっぽうで、脈絡はないものの、一つひとつの作品への自分の情熱に従って購入していく人もいます。高橋さんは後者でしょう。
高橋さんの初コレクションは、2015年、キュンチョメの作品です。「岡本太郎記念館で開催されていた、Taro賞授賞作家展の『もう一度太陽の下でうまれたい』(2015)に出展された作品でした。岡本太郎の『目の壁』という作品を再現して壊したもので、『ご自由にお取りください』と書いてあったので無料でいただきました」。
それまでも、デザイン雑貨が好きで、携帯電話のモックなどを飾っていたとか。でも、「この作品は家に持ち帰ったあと、作品自体に魂を感じました。人の手が加わって表現されている作品って、こんなに引き込まれるんだ、こんなに魅力的なんだ、と思いましたね」。
しかし、それを機にコレクションに目覚めて次々に購入するのではなく、ふたつめの作品を購入したのは3年後。村上隆のシルクスクリーン作品《覚醒》です。「これがコレクションへといたる分岐点だったと思います。ヤフオクで購入しました」。もともと村上隆が好きでしたが、高くて手に入らないと諦めていたそうです。
ただ、「そのときは自分が転職したことも重なって《覚醒》というタイトル、モチーフとして描かれていた『お花』にも惹かれ、家にあったら花が開くまで頑張れそうだなと思って購入しました。ヤフオクでしたが、実際に作品を観たことがあったので、偽物ではないとわかって買いました」。