Museum from Home:渋谷区立松濤美術館「いっぴん、ベッピン、絶品!~歌麿、北斎、浮世絵師たちの絵画」

新型コロナウイルスの影響で、会期途中で閉幕した展覧会や臨時休館となってしまった展覧会などの展示風景を紹介する「Museum from Home」。第8回は、4月4日の開幕が延期となった渋谷区立松濤美術館「いっぴん、ベッピン、絶品!~歌麿、北斎、浮世絵師たちの絵画」(5月17日まで)をご紹介します。

会場風景(地下1階展示室)
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 江戸時代に花開き、庶民文化が育んだ「サブカルチャー」とも言える浮世絵。そのなかでも、版画ではなく肉筆浮世絵に焦点を当てた展覧会が、渋谷区立松濤美術館の「いっぴん、ベッピン、絶品!~歌麿、北斎、浮世絵師たちの絵画」だ。

 第1章では、17世紀の初期風俗画を代表する岩佐又兵衛の名品を紹介。第2章では、18世紀までの画壇を席巻した菱川師宣の一派と、大柄な体躯の美人画で人気を博した懐月堂一派、たおやかで上品な美人画の宮川派の3派に、鳥居派の初期作品を加えて展覧する。

 また第3章では、18世紀中期に浮世絵界が活性化した百家争鳴の様相を、第4章では19世紀の京・上方を代表する西川祐信や月岡雪鼎、そして異色の絵師・祇園井特の作品を紹介。続く第5章では、半世紀ぶりの出品となる喜多川歌麿の貴重な肉筆画《隈取する童子と美人図》(19世紀)に注目したい。

 第6章には、歌麿亡き後、19世紀の浮世絵画壇を牽引した葛飾北斎の作品が登場。第7章では、開祖・豊春から広重、月岡芳年まで、画壇で最大勢力を誇った歌川派の系譜をたどる。そして第8章では北斎の作品をはじめ、春画の精髄といえる肉筆画が集結する。

 本展ではこうした時代の流れを追い、歌麿や北斎の新発見・再発見作品のほか、重要文化財・重要美術品を含む約80件を紹介。著名な浮世絵師たちの筆の冴えを堪能できる構成となっている。

岩佐又兵衛 弄玉仙図 17世紀 重要文化財 公益財団法人 摘水軒記念文化振興財団蔵 ※前期展示
懐月堂安度 やじろべえをもつ立美人図 18世紀 個人蔵 ※通期展示
会場風景(地下1階展示室)
勝川春章 雪月花図 18世紀 重要文化財 MOA美術館蔵 ※前期展示
会場風景(2階展示室)
会場風景(2階展示室)
歌川広重 命図 19世紀 個人蔵 ※通期展示
月岡芳年 雪中常盤図 19世紀 公益財団法人 摘水軒記念文化振興財団蔵 ※前期展示