江戸時代に花開き、庶民文化が育んだ「サブカルチャー」とも言える浮世絵。そのなかでも、版画ではなく肉筆浮世絵に焦点を当てた展覧会が、渋谷区立松濤美術館の「いっぴん、ベッピン、絶品!~歌麿、北斎、浮世絵師たちの絵画」だ。
第1章では、17世紀の初期風俗画を代表する岩佐又兵衛の名品を紹介。第2章では、18世紀までの画壇を席巻した菱川師宣の一派と、大柄な体躯の美人画で人気を博した懐月堂一派、たおやかで上品な美人画の宮川派の3派に、鳥居派の初期作品を加えて展覧する。
また第3章では、18世紀中期に浮世絵界が活性化した百家争鳴の様相を、第4章では19世紀の京・上方を代表する西川祐信や月岡雪鼎、そして異色の絵師・祇園井特の作品を紹介。続く第5章では、半世紀ぶりの出品となる喜多川歌麿の貴重な肉筆画《隈取する童子と美人図》(19世紀)に注目したい。
第6章には、歌麿亡き後、19世紀の浮世絵画壇を牽引した葛飾北斎の作品が登場。第7章では、開祖・豊春から広重、月岡芳年まで、画壇で最大勢力を誇った歌川派の系譜をたどる。そして第8章では北斎の作品をはじめ、春画の精髄といえる肉筆画が集結する。
本展ではこうした時代の流れを追い、歌麿や北斎の新発見・再発見作品のほか、重要文化財・重要美術品を含む約80件を紹介。著名な浮世絵師たちの筆の冴えを堪能できる構成となっている。