「外国人」は誰? 美術史のインクルーシブ
オーバーツーリズムが再び問題になっているヴェネチアで、「Foreigners Everywhere」という今年のビエンナーレのテーマが、アカデミア橋やヴァポレットの船体に掲げられている。街中では、今日も戦渦にあるウクライナとパレスチナへの連帯を示す展示が開催されているという。イスラエルとイランと米国は皆ビエンナーレの国別パビリオン参加国だ。各地の女性や子供の生活などを思いつつ、アルセナーレ会場に着いた。
もともと、ラグーナで守られたこの浮島にヴェネチア共和国を栄えさせたのは、古代ローマから避難してきた難民だった。近隣国に統治されたのち、イタリア王国になるとほかの宗主たちと植民地拡大を競った。ファシスト政権時には伊領東アフリカとして、今回国別パビリオン初参加のエチオピアなどを制覇していた。さらに、国内南部で貧困化が進むと、まとまった数の民が北米の東海岸北西部や南米ブラジル・アルゼンチンに渡った。20世紀中頃のイタリア系アメリカ人コミュニティの葛藤は、ハリウッド映画でも語られよく知られているだろう。
このように誰もがどこでも外国人であるにもかかわらず、よそ者は奇妙(*1)とみなされてきた。そんな彼らに世界最古かつ最大規模の国際美術展出展という大役が回ってきたのだ。自国にいても疎外されやすく、移民(国外居住者、離散者、難民、亡命者など)であるアーティスト、移民でなくともペドロサのように南北を移動する特権階級にあるアーティストも含まれる。