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ヴィクトリア時代の芸術一家3人が追求した美に迫る、テート・ブリテンの「ザ・ロセッティズ」

ラファエル前派のひとりとして知られるダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ。彼の妹であり19世紀のイギリスを代表する詩人クリスティーナ・ロセッティ、そしてパートナーのエリザベス・ロセッティ。ダンテ・ゲイブリエルを中心に、この3人に焦点を当てたエキシビション「ザ・ロセッティズ」が現在ロンドンのテート・ブリテンで開催中だ。ダンテ・ゲイブリエルの大規模な回顧展としては同美術館では20年ぶりとなる。彼に大きな影響を与えた2人の女性たちの作品を含む約150点の絵画と、写真、デザイン、詩などを通して3人の濃密な関係を浮き彫りにする。

文=坂本みゆき

展示風景より、ダンテ・ゲイブエル・ロセッティ《受胎告知》  © Tate (Madeleine Buddo)

「ラファエル前派」誕生へと導いた背景

 エキシビションは詩で幕を開ける。ダンテ・ゲイブリエルとクリスティーナが紡いだみずみずしい言葉が、中央に置かれたクリスティーナをモデルに描かれたダンテ・ゲイブエル作の《受胎告知》を取り囲むように壁に記されて最初の部屋を飾る。美術館の空間を絵画やインスタレーションではなく、言葉を並べた新しい試みが新鮮だ。

展示風景より、中央がダンテ・ゲイブエル・ロセッティ《受胎告知》。アートと言葉が多角的に訴えてくる展示構造だ  © Tate (Madeleine Buddo)

 ロセッティ一家には4人の子供がいた。長女のマリア、長男のダンテ・ゲイブリエル、次男のウィリアム、そして次女のクリスティーナ。イタリア人で学識者の父ゲイブリエーレと、イタリアとイギリスの血を引く母フランシスは、幼い頃から4人に文学とアートの教育を施し、ダンテ・ゲイブリエルとクリスティーナは15歳と14歳ですでに詩集を出版するほどになる。

 ゲイブリエーレはイタリアでの政治活動により祖国から亡命、イギリスに渡った過去を持ち、そのため彼らの家には頻繁に活動家などが訪問したという。そんな家庭環境が文化的にも成熟を見せたヴィクトリア時代のロンドンと相まって、権威あるものに反旗を翻すイギリスの絵画史初のアヴァンギャルドなムーブメントとも言えるラファエル前派(*)結成につながっていったとしている。のちに美術評論家となるウィリアムとダンテ・ゲイブリエルはその中心となるのはご存知の通り。マリアとクリスティーナは女性の地位が確立されていなかったこの時代に、詩作を通して声を上げ続けた。

ダンテ・ガブリエル《聖母マリアの少女時代》(1948-49)。ラファエル前派に属していた1848年から1849年に描いた。マリアはクリスティーナを、マリアの母はフランシスをモデルにしている ©︎Tate

強い影響を与えたエリザベスの存在

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