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優れた美術館デザインとは何か? デザイン大国・オランダの事例から考える

「ダッチ・デザイン」と呼ばれ、デ・スタイルの理念を受け継いだ機能的で無駄のないデザインが特徴のオランダのデザイン。そのデザインは、どのように美術館にも浸透しているのだろうか。元美術館学芸員でオランダ在住の樋上まきが、実際の事例をもとに紐解く。

文=樋上まき

アムステルダム国立美術館 Photo by John Lewis Marshall

 17世紀にレンブラント、フェルメール、19世紀にはファン・ゴッホを生み出したオランダは、現在ではデザインの分野で世界を牽引している。オランダのデザインは「ダッチ・デザイン」と呼ばれ、デ・スタイルの理念を受け継いだ機能的で無駄のないデザインが特徴だ。機能性と審美性が融合した実用的なダッチ・デザインは生活用品や都市空間などあらゆる分野でオランダの生活を支えている。

 また、オランダにおいてデザインとはかたちあるものをつくるだけでなく、問題解決の手段も含む。例えば1970年代のオランダは自動車の交通量の増大により多発する交通事故を解決するために国土のグランドデザインを変更した。車・自転車・人を分けることを目的に自転車専用道路を全国に整備した。このおかげで交通事故で死亡する子どもの数が1971年には400人以上だったのに対し、2019年には11人にまでに減った。社会構造を変更して明確な規則を定めたことで、個人のマナー向上や努力によらない問題解決を果たしている。

美術館に浸透するデザイン

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