荒神明香(アーティスト)、南川憲二(ディレクター)、増井宏文(インストーラー)の3名を中心とした現代アートチーム・目 [mé]。その企画展「SKY GALLERY EXHIBITION SERIES vol.5 『目 [mé]』」が東京・渋谷の渋谷スクランブルスクエア展望施設 SHIBUYA SKY 46階「SKY GALLERY」でスタートした。
「SKY GALLERY EXHIBITION SERIES」は、同施設で定期開催されるシリーズ展。共通テーマに「視点を拡げる」を掲げ、アーティストが本施設から受けたインスピレーションをもとにオリジナル作品を制作し、展示するというものだ。
第5回目となる本展のコンセプトは「都市の運動から抜け出し『ただ、眺める』」。回廊にあわせて作品が展示されている空間では、都市の風景と作品を掛けあわせながら鑑賞することが可能となり、普段の景色から少し距離を取りながら、「物事のありのままを眺める体験」がつくり出されている。
会場でまず目にするのは、時計の針が集合したインスタレーションだ。それらの針ひとつひとつは、時を刻みながら群れを成しているようであり、横には空を飛ぶ鳥の群がモニターに映し出されている。
このように、本展のもうひとつの特徴として挙げられるのが「非言語の体験」である。どの作品にもキャプションは存在せず、作品と映像が相互補完するような関係性となっている。
地球や木星を長時間露光で撮影した観測データから、その表面がガス状であることに関心を持った目 [mé] 。本作は人間の認識速度とは異なる目で地球を見たときに、その動きは残像としてかたちづくられるのではないかという発想のもと、回転させたバットの上に絵の具を垂らしながら実験的に制作されたものである。都市の動きを長時間露光で撮影した映像にも注目してほしい。
ほかにも会場には、目 [mé] がこれまで撮影してきた写真や、本展にあわせて撮影された写真が展示されており、目 [mé]がとらえた世界のすがたが示されている。それらは宇宙、空、鳥、そして地面に落ちる屑までと、マクロとミクロを自由に行き来するような視点移動があり、都市の展望と作品を行き来する鑑賞体験にもリンクしているようだ。
また、展示空間内にはいくつか本展ウェブサイトへとつながるQRコードが設置。各コードによって、異なる目 [mé]の視点へと誘導されることだろう。
本展の開催に際して目 [mé]の南川、荒神は次のように述べた。「都市は絶えず運動をしており、意味を持つことを強いられる場面が多い。そんな日常から少し離れた場所とも言えるこの『SKY GALLERY』で、意味から逃れボーッと過ごす体験を味わってほしい」。
SKY GALLERYは展望回廊であるがゆえに、季節や時間、天気によって都市や作品の見え方が変化する点がユニークとも言える。どの時間帯に来場するかを考えてみるのも、ひとつの鑑賞体験の面白さなのかもしれない。