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プチ・パレ美術館のコレクションから見るフランス近代絵画の潮流。SOMPO美術館で展覧会開幕

スイスのプチ・パレ美術館のコレクションを通し、19世紀後半から20世紀前半のフランス近代絵画を紹介する展覧会「スイス プチ・パレ美術館展 印象派からエコール・ド・パリへ」がSOMPO美術館で開幕した。本展の見どころを担当学芸員の言葉とともに紹介する。

展示風景より、左はモーリス・ドニ《ペロス=ギレックの海水浴場》(1924)

 スイス・ジュネーヴにあるプチ・パレ美術館のコレクションから、19世紀後半から20世紀前半にかけてのフランス近代絵画を中心に紹介する展覧会「スイス プチ・パレ美術館展 印象派からエコール・ド・パリへ」が、東京・西新宿にあるSOMPO美術館で始まった。

 プチ・パレ美術館は、1968年にチュニジア出身の実業家オスカー・ゲーズが自身のコレクションを公開することを目的に設立した。そのコレクションには、ルノワールやユトリロなどの著名なアーティストに加え、あまり知られていなかった画家たちによる優れた絵画も数多く収蔵されている。

 同館は、1998年に創設者の逝去後から現在まで休館が続いており、作品を他館に貸与するかたちで活動している。今回の展覧会は、日本では約30年ぶりの同館のコレクション展となっている。

展示風景より
展示風景より

 展覧会は6章構成。印象派から新印象派、ナビ派、フォーヴィスム、キュビスム、エコール・ド・パリまで、世紀転換期のパリにおける様々な絵画運動を38名の画家による油彩画65点を通して紹介している。

 本展の開幕にあたり担当学芸員の武笠由以子は、「プチ・パレ美術館のコレクションには、その創設者であるオスカー・ゲーズという人の考えや信念が色濃く反映されている」と話す。

展示風景より
展示風景より

 武笠によると、ゲーズは他人の意見に頼って作品を購入するのではなく、自分自身の目でコレクションを構築した。また、「企業経営者としての視点を持っていたゲイツ氏は有名な画家、例えばピカソやマティスなど、高額な値段で取引されている作家の作品を少数のみ購入する」より、「自身が関心を持っていたエコール・ド・パリやベル・エポックの時代に活躍した画家たちの作品を比較的に入手しやすい価格で、まとまった数で収集した」のだという。

 例えば第1章「印象派」では、印象派の画家たちの支援者であり、後に画家として再評価されたギュスターヴ・カイユボット、第2章「新印象派」では、ジョルジュ・スーラと親交を結び、互いに影響を与えたシャルル・アングラン、第4章「新印象派からフォーヴィスムまで」では、マティスとともに美術学校で学び、フォーヴィスムの形成に関わったシャルル・カモワンなどの作品が紹介されている。

第1章「印象派」の展示風景より、中央はギュスターヴ・カイユボット《子どものモーリス・ユゴーの肖像》(1885)
第2章「新印象派」の展示風景より、左からアルベール・デュボワ=ピエ《ボニエールの近くの村》(1888)、シャルル・アングラン《収穫》(1887)《画家の母の肖像》(1885)

 また、ゲーズは「当時美術界で名声を確立したり、認められたりすることが難しかった女性の画家たちの作品も収集して、それを公開することで世に送り出そうと努めていた」という。

 第5章「フォーヴィスムからキュビスムまで」では、1907年にキュビスムが初めて登場したとき、運動に参加するだけでは飽き足らず独自のスタイルを発展させようとしたジャンヌ・リジ=ルソーや、20世紀初頭のモンパルナスでフォーヴィスムやキュビスムなどの前衛的な画家と親しくなったマリア・ブランシャールの作品を見ることができる。第6章「ポスト印象派とエコール・ド・パリ」では、モーリス・ユトリロの母であり、独学の画家でもあったシュザンヌ・ヴァラドンによる力強い女性像が描かれた作品も強い印象を残した。

第5章「フォーヴィスムからキュビスムまで」の展示風景より、左からマリア・ブランシャール《静物》(1917)《輪回しをする子ども》(1916-18)、ジャンヌ・リジ=ルソー《白い胸あて》(1911)
展示風景より、左からシュザンヌ・ヴァラドン《コントラバスを弾く女》(1908)《暴かれた未来、あるいはカード占いの女》(1912)

 本展の開催趣旨について、武笠は「美術手帖」の取材に対してこう述べている。「日本では、印象派の中心的な人物だったルノワールやモネが非常に知られているいっぽうで、その周辺の作家たちがあまり知られていないことが多いと思います。周辺の作家のなかにも重要な人物がたくさんいますし、普段あまり興味が持てないという方にも、実際に展覧会に足を運んでいただき、作品を見て興味を持っていただければとても嬉しく思います」。

 なお武笠は、プチ・パレ美術館の収蔵品が「現地でも見ることができない」ことを強調している。過小評価されていた画家たちや、歴史のなかで見過ごされていた女性の画家たちの作品が数多く出品された本展を通し、これまで知らなかった作家と出会い、19世紀後半から20世紀前半のフランス近代絵画の潮流をあらためて確かめてみてはいかがだろうか。

展示風景より
展示風景より
展示風景より

編集部

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