2022.7.8

大阪・北加賀屋で開催中の「TIDE – 潮流が形になるとき – 」展で見る、コレクション展のあり方

大阪・北加賀屋エリアを「アートのまち」としてかたちづくっている千島土地株式会社のコレクションを紹介する展覧会「TIDE – 潮流が形になるとき – 」が、北加賀屋各所で開催されている。会期は7月11日まで。

展示風景より
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 2009年より「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ(KCV)構想」を掲げ、大阪・北加賀屋エリアを創造性あふれるまちに変えていく試みを進めている千島土地株式会社。同社のコレクションを展示する「TIDE – 潮流が形になるとき – 」展が、7月11日まで北加賀屋各所で開催されている。

 現在、同エリアに40以上のKCV関連拠点を持ち、「アートのまち北加賀屋」をかたちづくっている千島土地株式会社。本展は、同社がこうした活動のなかで出会い、収集した作家たちの作品を中心に紹介するものだ。

 展覧会のキュレーションは笹原晃平が担当。千島土地コレクションにおける、①収蔵の経緯、②場所の来歴、③作家の由縁、④作品の遣道、といった4つの「潮流(タイド)」が交錯する瞬間的な状況を、展覧会という「形(フォーム)」で公開することを試みる。

kagooの外観

 メイン会場となるのは、家具店をリノベーションしたギャラリー・kagoo(カグー)。ここで、西野達や三宅砂織、金氏徹平、能條雅由、横溝美由紀、増田セバスチャンなど約40人の作家による作品が展示されている。

 笹原によると、本展の展示作品は同社が「収蔵した順番」に並んでいるという。それはひとつ目の潮流「収蔵の経緯」でもある。

展示風景より、冒頭部分で展示されたなかもりゆうこ《ヴァリアント》(2008)、西野達《Life's little worries in Osaka》《おおさかDNA》(いずれも2011)
展示風景より、冒頭部分で展示された山本聖子《frames of emptiness》(2011)

 冒頭部分では、不動産に関するモチーフが用いられた作品や、地域芸術祭との関係性から収蔵された作品が展示。その後、現在第一線で活動している作家たちの初期作やNFT時代以前のデジタル作品を経て、最近のコレクションにおいて中心になってきているような若手作家による大型作品を見ることができる。こうした流れを通して、同社のコレクションの変遷をたどることもできる。

展示風景より
展示風景より

 ふたつ目の潮流「場所の来歴」は展示会場そのものに紐づくものだ。元家具倉庫および併設のショールームであったこの建物は、今後も継続的に展示会場やギャラリーとして使用予定だという。「作家の由縁」は、作家にとってすべて過去のものである作品からみると、自分を生み出した作家たちがすでに未来にいるということを指している。

 また、kagooで展示されているファインアートの作品に加え、サテライト会場・千鳥文化では、同社が収蔵している掛軸や香炉、香合などの応用美術も展示。こうした作品の“用途”によって生まれた異なる潮流は、最後の「作品の遣道」だという。

千鳥文化での展示風景より
クリエイティブセンター大阪の屋外で展示された久保寛子《やさしい手》(2018)

 本展のキュレーションノートにおいて笹原は次のように記述している。その言葉を引用して本レポートを締めくくりたい。

通常のコレクション展という文脈でみれば、何度もいうように、蒐集した中にテーマを設け、あるいはメディアで分類し、所蔵についての何かしらの真っ当な説明をするのが一般的かもしれません。そのように、あるテーマを導入して、ブランディングする形式を放棄したのは、やはりどこまでいっても、作品はそのためには作られていないことが、表現においてはとても大切なことであるように思えてならなかったからです。さらに、作家はすでに未来にいることを明示しつつ、コレクターと作品との個人的な出会いと、それが再度集められた展示空間という現在地を瞬間的に公開するという状態をそのまま生で見せることが、ある種の表現の所有に対する誠実な回答であると考えています。