伊勢丹新宿店で、20世紀のプロダクトデザインに大きな影響を与えたデザイナー、チャールズ・イームズとレイ・イームズ夫妻によって設立された「イームズオフィス」の80周年を記念した期間限定イベント「Eams Office: 80 Years of Design」が開幕した。会期は2022年1月5日まで。
本展では、イームズ夫妻の貴重なヴィンテージ作品や復興作品、コラボレーションアイテムとともに、ふたりの活動の歩みを追うことができる。
会場ではまず、イームズ夫妻のデザインしたハーマンミラー社の家具を紹介。シートと背もたれの連結部分から余計な木材を省き、軽量ですっきりとした外観を実現した「プライウッドチェア」(1946)や、ファイバーグラスを成型して有機的なシェルシートを実現した「グラスシェルチェア」(1950)など、夫妻の代表作となる椅子を展示販売。実際に座り心地をたしかめることもできる。
また、ニューヨーク近代美術館(MoMA)にオリジナルが展示されている「プライウッドスカルプチャー」のエディションも展示販売されるが、本作とともに見たいのがイームズ夫妻が手がけた「モールデッドプライウッドレッグスプリント」の原型だ。これは夫妻が初めて手がけた大量生産品として知られており、第二次世界大戦の際、負傷兵の足の添え木としてデザインされたもの。「プライウッドスカルプチャー」のエディションは少数生産、「モールデッドプライウッドレッグスプリント」は量産品という差異はあるが、ともにイームズ夫妻のデザインの思想を端的に表しているものといえるだろう。
さらに会場では夫妻が1949年に自宅兼スタジオとしてカリフォルニアに建築した「イームズハウス」(1949)の20分の1スケールの建築模型を展示。内部の家具や周囲の風景までを細密に表現したこの模型は、様々な角度からイームズハウスを見ることができ、夫妻の設計の思想に触れるための手がかりとなるだろう。
もうひとつの建築模型は「イームズモジュラーハウス」(1951)のものだ。「イームズモジュラーハウス」は、プレハブ工法で比較的短時間で組み立てられる建築として夫妻が設計。スポンサーと敷地は用意されたものの、実際に建築されることはなかった。
この建築模型の原型はすでに失われていたものの、イームズオフィスが設計図や写真を掘り起こし、12分の1スケールで再現。今回は模型のなかにカメラを入れて撮影された映像も上映され、完成時の姿を想起させてくれる。
また、イームズハウスはオーストラリアのスケートボードブランド・グローブ社とコラボレーションし、「イームズハウススケードボード」を発表。イームズハウスの敷地内に植えてある、建築に接触しそうになっていたユーカリの木をつかってつくれられた100個限定のこのボードは、イームズハウスを維持しようとするなかで、新たなプロダクトが生まれていることを伝えている。
会場にはイームズ夫妻の年表や関連書籍のほか、ふたりが携わった様々なインテリアグッズも並ぶ。これまでイームズのコレクションに触れたことがなかった人も、あらためてその思想を体感できるイベントとなっている。