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「記憶の果てに浮かぶ風景」を探る。大竹伸朗の新作展「残景」がTake Ninagawaで開催中

アッサンブラージュやコラージュなどの手法を用いて、多岐にわたる活動を展開しているアーティスト・大竹伸朗。その新作展「残景」がTake Ninagawaで開催中。会期は12月18日まで。

展示風景より (C) Shinro Ohtake, courtesy of Take Ninagawa, TokyoPhoto by Kei Okano

 直島にある銭湯を転用したパブリック・アート《直島銭湯「I♥湯」》などで知られるアーティスト・大竹伸朗。東京のギャラリー・Take Ninagawaでは5年ぶりとなる大竹の新作展「残景」が10月30日にスタートした。

 大竹は、アッサンブラージュやコラージュ、ドローイング、絵画、彫刻などの手法を用いて、多岐にわたる活動を展開しているアーティスト。これまで「大竹伸朗 全景 1955-2006」(東京都現代美術館、2006)や「大竹伸朗:憶速」(高松市美術館、2013)、「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」(熊本市現代美術館ほか、2019)などの美術館個展を開催し、2012年のドクメンタ13や13年の第55回ヴェネチア・ビエンナーレにも参加した。

 大竹によると、「残景」とは「自分が見た記憶や積み重なった先に出てくる風景」や「記憶の果てに浮かぶ風景」を指すという。本展では、大竹が2019年以降取り組んでいる同シリーズから14点の新作を展示している。

展示風景より © Shinro Ohtake, courtesy of Take Ninagawa, Tokyo
Photo by Kei Okano
展示風景より © Shinro Ohtake, courtesy of Take Ninagawa, Tokyo
Photo by Kei Okano

 大竹の作品に通底するのは、「貼る」という行為とも言える。Take Ninagawaのオーナーである蜷川敦子は、「大竹さんの『貼る』というのは、ただ表面的に画面構成しているのではなく、拾ってきたモノや音や光など、その素材が持つ時間や記憶ごとアーカイブしている」としつつ、「『残景』は、その上に絵の具でマチエールをつくり彼自身の心象風景を最終的に仕上げているというのがとても特徴的だ」と話す。

 今回の新作群では、靴箱のダンボールや、異なる種類の布や紙などの素材を組み合わせた分厚い堆積物から成り立っている。大竹は、「マチエールの微妙な出っ張りに興味を持ち出したのがきっかけだ」とし、「中学校のときに油絵を独学で始めたが、薄く塗った絵よりも出っ張っている絵が好きだった。まず気に入ったダンボール箱みたいなのを貼ってしまう。そこから上にどんどん貼っていったり、破いてとったりするのを繰り返している」と語っている。

展示風景より © Shinro Ohtake, courtesy of Take Ninagawa, Tokyo
Photo by Kei Okano
展示風景より © Shinro Ohtake, courtesy of Take Ninagawa, Tokyo
Photo by Kei Okano

 1988年に制作の拠点を東京から愛媛県宇和島市に移した大竹は、30年間以上行き来することが多かったが、コロナ禍以降は初めて宇和島に1年以上滞在したという。「だから1点(の作品)にかける時間が異様に長くなる。制作のときはだいたい2点か3点を同時に進行する」。

 2022年には「ハワイ・トリエンナーレ2022」への出展を予定し、東京国立近代美術館での大規模回顧展を控えている大竹。コロナ禍でオンラインでのアート鑑賞が主流となっている現在、実空間での展覧会についてこう述べている。

 「絵や音楽の傑作には、それを完成させた時代の空気や時間を真空パックして閉じ込めているから、未来の人が見てもつねにその時間の流れが時代を超えて受け継がれていく。絵をひとつの空間で見るのは消えてなくならないと思う」。

展示風景より © Shinro Ohtake, courtesy of Take Ninagawa, Tokyo
Photo by Kei Okano
展示風景より © Shinro Ohtake, courtesy of Take Ninagawa, Tokyo
Photo by Kei Okano

編集部

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