角川武蔵野ミュージアムのオープン1周年記念展として、巨大映像空間へ没入する360度体験型展覧会「浮世絵劇場 from Paris」が、10月30日にスタートした。
2018年から19年にかけてフランスで開催され、合計200万人を動員した展覧会「Dreamed Japan “Images of the Floating World”」。今回の展覧会は、同展の作品を大幅にパワーアップして日本で凱旋展示するものだ。
展覧会は3部構成。アーティスト集団「ダニーローズ・スタジオ」が浮世絵にテクノロジーとストーリーを掛け合わせて創造した12幕の異なる映像シーンを巨大な空間に映し出すメインエリア「スピリット・オブ・ジャパン」に加え、映像で使用された大量の浮世絵や、新たな感性で浮世絵をつくり続ける日本の現代浮世絵師たちの作品を紹介する「後室」エリアと、ダニーローズ・スタジオが影響を受けたアーティストたちの関連資料を集めた無料エリカを楽しむことができる。
メインエリアのオープニングを飾るのは、葛飾北斎や歌川広重らによる浮世絵風景画の数々。『富嶽三十六景』『諸国瀧廻り』『東海道五十三次』などが屏風や扇のように現れて消え、鑑賞者を浮世絵の世界へと誘う。
桜の花が映し出されて舞い散る第2幕「桜」と、蛍の群れが光り輝く森を奇妙が動物たちや妖怪たちが彷徨う第3幕「日本の妖怪たち」を経て、第4幕「海」では沖の大波が突如、空間全体を包み込む。モチーフとなるのは、葛飾『富嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏」。大波が押し寄せ、砕け散りて静まってから、色やかたちの異なる魚や大蛸、巨大な鯨が海中を泳ぐ第5幕「魚」が登場する。
続く第6幕〜第10幕では、それぞれ「花」「女」「扇」「書」「空」をモチーフに多彩なシーンを映し出す。第11幕「歌舞伎・侍」では、目、口、手を提灯の明かりがほのかに照らす歌舞伎役者や、刀を構えていざ合戦に向けて激しい戦さの踊りを繰り広げる侍の姿を見ることができる。
戦さの緊張が解け、無数の提灯が夜空に昇る第12幕「提灯」が上映される。まるで浮遊しているかのような気分を味わい、12幕の映像は幕を下ろす。
本展のプロデューサーを務める今井久は、「本作は正しく見る位置はない。巨大な空間に広がっているのでときには立ち止まり、ときには腰をかけたり歩き回ったりしても構わない。どこを見ても正解の鑑賞方法となる」と話している。
テクノロジーとストーリーを掛け合わせ、360度映像に包まれる浮世絵の世界を堪能してほしい。