東京国立博物館 表慶館で、同館所蔵の日本美術の名品の複製と、アイドルグループの乃木坂46がコラボレーションした展覧会「春夏秋冬/フォーシーズンズ 乃木坂46」(9月4日〜11月28日)が開催。そのハイライトをレポートする。
本展では春夏秋冬の花をモチーフとした7点の日本美術の古典と、乃木坂46を重ね合わせて紹介。各古典を解釈したうえで、映像作家が制作した乃木坂46メンバーがパフォーマンスする映像作品を、その複製品とともに展示する。また、各作品には「解き明かされる日本美術の本質」として、各古典にまつわるテーマが設定されている。
最初の展示は、狩野長信による《花下遊楽図屛風》(17世紀)の複製と、齋藤飛鳥がパフォーマーを務めた映像を、「日本美術の遠近表現」をテーマに展示。桜の下の賑やかな宴の様子が描かれた《花下遊楽図屛風》の遠近表現を、スリットカーテンに投影することで独特の奥行きを表現した映像が複製と組み合わせた。映像は大久保拓朗が担当。
『源氏物語』の六条御息所を描いた上村松園《焔》(1918)の複製は「妖しい美」をテーマに、遠藤さくらがパフォーマンスする映像と展示。細長い廊下状の空間に複製と映像が対置され、観覧者は両者を振り向きながら交互に見ることができる。映像は池田一真が手がけた。
「切り取られた瞬間」をテーマに展示されるのは、酒井抱一・尾形光琳《夏秋草図屛風・風神雷神図屛風》(18〜19世紀)の複製だ。中央に置かれた複製の左右のスクリーンでは山下美月と久保史緒里がパフォーマンスする映像を上映。ハイスピードカメラによって撮影された映像は、神谷雄貴が制作した。
表慶館の2階に上がって最初の展示は、俵屋宗雪の《秋草図屛風》(17世紀)の複製を使ったもの。複製の上に2枚のスクリーンを設置、「ループ構造」をテーマに、生田絵梨花がモニターをまたぐパフォーマンスを行う映像が上映される。映像制作は東市篤憲が担当。
菱川師宣《見返り美人図》(17世紀)の複製展示のテーマは「秘められた風景」。横堀光範による賀喜遥香のパフォーマンス映像が、左右入れ違いに設置されたモニターで上映され、複製画は中央モニターの裏に設置。呼び止められて振り向く《見返り美人図》の持つ表裏が表現される。
「時間のジオラマ化」がテーマとなっているのは雪舟等楊の筆と伝わる《四季花鳥図屛風》(15世紀)の複製展示だ。展示室には12台の小さなモニターが複製と対峙するかたちで横一列に並び、春夏秋冬を表現した星野みなみ、与田祐希による映像を映し出す。この今原電気による映像は、奥行きを感じさせる立体映像となっている。
最後は《振袖 白縮緬地梅樹衝立鷹模様》の複製と、梅澤美波によるパフォーマンス映像のコラボレーションだ。大小のモニターが空間を取り囲むように配置され、映像が継ぎ接ぎ状にコラージュされように演出される。「シュールなだまし絵」がテーマの本展示は、伊藤衆人が手がけた。
東博の日本美術の名品が持つ特徴を、アイドルグループ出演の映像とともに学ぶことができる展覧会となっている。