約2万枚の花崗岩を使用した角川武蔵野ミュージアム
今年11月、埼玉県所沢市にグランドオープンを予定している「ところざわサクラタウン」。それに先駆け、同敷地内にある「角川武蔵野ミュージアム」がプレオープンを迎えた。
そもそもところざわサクラタウンとは、KADOKAWAと埼玉県所沢市が、「みどり・文化・産業」が調和する地域づくりを目指し、協働で進めているプロジェクト「COOL JAPAN FOREST構想」によって建設される巨大施設。浄水所の跡地を利用したもので、土地面積4万平米のなかに、文化施設と宿泊施設、書籍製造・物流工場、そしてKADOKAWAのオフィスが入る。
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そのなかで文化の発信拠点となるのが、角川武蔵野ミュージアムだ。まず目を引くのがその外観。隈研吾が設計を手がけたの同館は、高さ30メートルの巨大な岩をモチーフにした建物。外壁には、1つおよそ50kg~70kgの花崗岩を約2万枚も使用しており、66枚の三角形を組み合わせた複雑な外観は、見る角度や光の加減によって様々な表情を見せる。隈はこの建築について、「地形そのものが建築になったようなものがつくりたかった」と語っている。
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外観から階層構造を読み取れない角川武蔵野ミュージアムは5階建て。1階には、館内でもっとも広大な1000平米を誇る「グランドギャラリー」と、KADOKAWA刊行のマンガやライトノベル2万5000冊を配架する「マンガ・ラノベ図書館」が位置する。
2階は受付やショップ、カフェで、3階には700平米の「EJアニメミュージアム」が、4階には荒俣宏監修の「荒俣ワンダー秘宝館」と松岡正剛監修の「エディットタウン」が、そして5階には武蔵野をテーマにした展示を展開する「武蔵野ギャラリー」などが入る。また4~5階を、高さ8メートルの本棚に囲まれた「本棚劇場」が貫く構成だ(3階以上の施設は11月にオープン予定なので注意してほしい)。
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プレオープンは隈研吾展
角川武蔵野ミュージアムで今回プレオープンしたのは、1階のグランドギャラリーとマンガ・ラノベ図書館、そして2階のカフェだ。そして竣工記念として、グランドギャラリーでは「隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生 ― 石と木の超建築」が開催される。
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本展は、角川武蔵野ミュージアムの建物自体をメイン作品としてとらえ、その建築を解説するような展覧会。外観や内部空間(一部のエリア)・周辺のランドスケープデザインを公開するとともに、構想から設計、実際の工法までを、隈のテキストや設計図、インタビュー映像など、様々な資料で紹介する。
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また、これまで隈が携わった石の建築と木の建築を模型で紹介。グランドギャラリーに柔らかな布の展示台を設置し、その上に自然素材である石と木を用いた近年の代表作の模型群を展示する。
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木の建築では、国立競技場(東京)や村井正誠記念美術館(東京)など4点を、石の建築ではV&Aダンディ(スコットランド)や石の美術館(栃木)など4点を見ることができる。模型にはもちろん、展覧会会場である角川武蔵野ミュージアムも含まれている。
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また、会場では写真家・新津保建秀が隈建築23件を撮り下ろし、その写真を壁面全体にプロジェクションするインスタレーション《往還の風景_1961-2020》も展示されているので、じっくりと楽しんでほしい。
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神社やチームラボの常設展示も
ところざわサクラタウンの敷地内には、神社「武蔵野坐令和神社(むさしのにます うるわしき やまとの みしろ)」も誕生した。これは、隈研吾が建築デザインを監修し、国文学者・中西進が命名したもの。
天井画は天野喜孝が、ニホンオオカミをモチーフにした狛犬は土屋仁応が手がけるなど、アートの要素が強い神社となっている。
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また、角川武蔵野ミュージアムに隣接する東所沢公園内にオープンした「武蔵野樹林パーク」も注目のスポットだ。武蔵野樹林パークでは「チームラボ どんぐりの森の呼応する生命」が常設展示され、2つの作品《自立しつつも呼応する生命 - 液化された光の色》と《呼応する木々》が展示。
水滴のような立体「ovoid」に触れると、音と光(昼は音のみ)が周囲の立体物理にも伝播していくという、チームラボが得意とするインタラクティブな作品を楽しみたい。
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