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「出展作家と作品を守らねばならない」。あいちトリエンナーレ2019で起きていること

抗議が殺到し、安全上の理由から展示を中止した「あいちトリエンナーレ2019」内の「表現の不自由展・その後」。展示中止から一夜明けた8月4日の様子と、いま同トリエンナーレが直面する課題についてまとめる。

 

「表現の不自由展・その後」の展示室前に設置された壁

 京都アニメーションの放火殺人事件を示唆するような脅迫FAXなどを受け、展示が中止された「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」。しかし、「表現の不自由展・その後」実行員会が展示中止に対する抗議文を発表し、河村たかし名古屋市長は関係者に謝罪を要求するなど、事態が収束する様子はまだない。

 中止決定から一夜明けた4日の名古屋・栄では、展示中止に対する抗議活動を行う市民団体と、展示反対を主張する街宣車が激しく対立し、警察が介入する場面も見られた。

 いっぽう、「表現の不自由展・その後」が展示されていた愛知芸術文化センターは多くの鑑賞者で賑わっていたものの、同展示室への通路には稼働壁が設置され、展示中止を知らせる案内も掲示された。

「表現の不自由展・その後」が展示中止となったことを知らせる掲示

 ある関係者は今回の展示中止について、「表現の自由を守るという理念が、(法的根拠がなくとも)数の論理で倒せるということが立証されてしまった。そのような状況を、行政が黙認どころか謝罪まで要求するというのは、検閲どころか弾圧ではないか」と語る。

 「(展示が)政治的なパフォーマンスの具として使われた。芸術祭(の運営側)が、行政の長である名古屋市長とどう対応していくかを問われている状態は遺憾」。

支援の声、高まるが

 展示中止に対しては、日本ペンクラブが声明を発表。行政がやるべきこととして、「作品を通じて創作者と鑑賞者が意思を疎通する機会を確保し、公共の場として育てていくこと」を主張する。

 またネットでは、有志による「あいトリ『表現の不自由展』」及び《平和の碑》展示中止反対署名」が始まり、Twitterでは「#あいちトリエンナーレを支持します」というハッシュタグが一時トレンド入りした。SNSには「表現の不自由展・その後」を巡回させてはどうかという意見も見られる。

 別の関係者によると、今回の展示中止決定によって抗議の電話などは減っており、脅迫については警察には届け出ているというが、未だに安全性が約束された状態ではない。展示再開などを求める声があるいっぽう、根本的な原因である「暴力」を防ぐ手立てを確立しなければ、その実現は難しいだろう。

 芸術監督・津田大介が8月3日の記者会見で語った通り、今回の抗議では多くのスタッフが疲弊する結果となった。抗議電話のなかには、応答したスタッフの家族に危害を与えることをうかがわせるものもあったという。

 参加作家だけで90組以上が関わる巨大な芸術祭。 いまも会場には多くのボランティアスタッフがいる。「スタッフの不安を置き去りにはできない」「出展作家と作品を守らねばならない」、関係者の言葉が重く響く。

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