IAMAS創立30周年展「the Augmentation」が東京で開催。AIやVRは私たちの知覚をどう変えるのか?

岐阜県大垣市にある情報科学芸術大学院大学[IAMAS]の創立30周年を記念する展覧会「the Augmentation──テクノロジーとアートの短絡(ショートサーキット)」が、東京・芝浦のSHIBAURA HOUSEで開催される。会期は11月21日〜23日。

文=大原愛美(編集部)

 岐阜県大垣市にある情報科学芸術大学院大学[IAMAS]の創立30周年を記念する展覧会「the Augmentation——テクノロジーとアートの短絡(ショートサーキット)」が、東京・芝浦のSHIBAURA HOUSEで開催される。会期は11月21日〜11月23日。本展では、IAMAS修士課程プロジェクト研究から「Augmented State Project」と「テクノロジーの〈解釈学〉」を軸に、AIやXRなどのテクノロジーが私たちの知覚や身体にもたらす変化に着目しながら、技術と芸術の関係を問い直す。

Augmented State Project《Dreamachine VR》

 1996年の創立以来、先端技術を用いた芸術表現や研究活動を展開し、日本のメディアアートの発展にかかわってきたIAMAS。テクノロジーが日常生活の隅々まで浸透した現在、その役割は新たな表現手段を提供するだけにとどまらない。AIやアルゴリズム、ネットワーク、計測技術などは、私たちの知覚や感情、コミュニケーションのあり方そのものを変容させている。

 本展が着目するのは、こうした技術を通じて人間の能力や経験が「拡張」されることの意味だ。テクノロジーを単なる道具として扱うのではなく、人間と技術の境界が曖昧になりつつある状況を、芸術の側からいかにとらえ直すことができるのか。その可能性を、体験型作品やインスタレーション、制作過程のドキュメンテーションなどを通して提示する。

知覚と意識はどこまで変わるのか? VRで体験する《Dreamachine》

 「Augmented State Project」は、意識や知覚の変容とメディアの関係を探究するプロジェクトだ。人工知能やXR、変性意識研究などを背景に、技術を介することで人間の知覚や体験がどのように変化しうるのかを検討している。

Augmented State Project《Dreamachine VR》

 本展では、ブライオン・ガイシン(1916〜1986)らが考案した《Dreamachine》を再制作した装置と、その原理をVRへと展開したVRを展示する。《Dreamachine》は、回転する円筒と光によって明滅を生み出す装置だ。今回の展示では、その仕組みを再現した装置とVRによる体験を通して、異なるメディアが知覚や意識にどのように作用するのかを探る。

永井歩《Virtual Hallucinogen》

 さらに、IAMAS卒業生の永井歩の作品《Virtual Hallucinogen》も紹介。鑑賞者がVRを体験できる作品を通して、現実の身体と仮想的な環境の関係にも目を向ける。

作品を「つくり直す」ことで、テクノロジーを読み解く

 もうひとつのプロジェクト「テクノロジーの〈解釈学〉」が取り組むのは、既存のメディアアート作品を自らの手で再制作するという実践だ。

 高度化する技術がブラックボックス化し、その仕組みを理解することが難しくなりつつある現在、作品を構成する技術や制作過程を改めて検証することには、どのような意味があるのか。同プロジェクトでは、作品を実際につくり直すことを通して、作家の思考や技術的な選択を制作の時間の内側から理解し、テクノロジーを自ら解釈し直すことを目指している。

《再制作:落書きの原理について》プロトタイプによる描画(テクノロジーの〈解釈学〉、原作:やんツー)
《再制作:10番目の感傷(点・線・面)》プロトタイプ(テクノロジーの〈解釈学〉、原作:クワクボリョウタ)

 本展では、やんツーの《落書きの原理について》の再制作を展示。また、クワクボリョウタの《10番目の感傷(点・線・面)》や、三原聡一郎の《空気の研究》については、再制作の過程を記録したドキュメンテーションを紹介する。完成した作品を鑑賞するだけでなく、その成立過程や技術的な仕組みに目を向けることで、芸術表現とテクノロジーの関係を異なる角度からとらえ直す試みだ。

 会場ではこのほかにも、体験型作品やインスタレーション、研究活動の記録など、作品制作と研究を横断するIAMASの実践が紹介される。

クワクボリョウタ・畠中実らが登壇。メディアアートの現在を考える関連イベントも

 会期中には、アーティストや研究者によるトークイベント、研究会なども予定されている。初日の11月21日には、15時からクワクボリョウタらが登壇するイベントを開催。同日18時からは、蛭川立(明治大学)と平林真実(IAMAS)が登壇する。11月22日には、メディア表現学研究会「メディアアートを〈拡張〉する──器官学と個体化論を手がかりに」を開催。藤田尚志(京都工芸繊維大学)、米田翼(東京大学)が登壇し、小林茂(IAMAS)と大久保美紀(IAMAS)がディスカッサントを務める。最終日の11月23日には、鈴木宣也(IAMAS)と畠中実による対談も予定されている。

 人間の知覚を拡張する技術と、その仕組みを解き明かそうとする芸術実践。IAMASの30年を背景に、技術を使って何ができるのかという問いから、技術そのものをいかに理解し、向き合うのかという問いへと視点を広げる3日間となりそうだ。

編集部