家族や人間のあり方を問いかける。ルース・マーバンの個展「Limited But Expandable」がMARGINで開催へ

　ジャカルタを拠点に活動するアーティストのルース・マーバン。その近年のアクリル画や水彩画を紹介する展覧会「Limited But Expandable」が、東京・馬喰横山にあるギャラリー・MARGINで開催される。会期は11月10日〜12月16日。

　マーバンは1985年インドネシア生まれ。ラッフルズ・デザイン・インスティテュート（シンガポール）、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション（イギリス）でファッションデザインの学士を取得。ファッションのキャリアを経て、アーティストに転身し、現在はジャカルタを拠点に制作している。ペインティング、ドローイング、テキスタイル、版画、アニメーションの制作を通じて、人間とその周囲を取り巻く環境の相互関係、適応と生存のための人間の繁栄する能力を探求している。

　マーバンの作品は、ジャカルタ、ジョグジャカルタ、シンガポール、オーストラリア、ニューヨークで展示されている。最近は、Artsphere Gallery Jakarta（2023）で3回目の個展「Perangai」を開催し、ジョグジャカルタのアートイベント第16回の「ArtJog」（2023）にも参加した。

　日本での初個展を開催するマーバン。本展に向けて今年制作されたアクリル・水彩の最新作に加え、アートジャカルタ2018で発表されて注目を集めた、アクリルキャンバスの大作など約20点が展示。5年の歳月を隔てて制作された新旧の作品が並置されるこの展覧会では、アーティストの創作活動の変遷や、一貫して家族のあり方、遺伝と環境の論争、そして信頼といった主題を据えて探求してきた絵画実践が紹介される。

　幼少期から大学、アーティスト・イン・レジデンスでの滞在を含め、ロンドン、シンガポール、アムステルダム、ニューヨーク、ジャカルタなど、様々な都市環境に身を置いてきたマーバンは、多様な人々から集めた人生経験とその感情を、疑問や不安の表現に落とし込むことで作品の基礎を形成した。その作品は、人間の不完全さを強さの源として称え、回復力と変化の能力を強調している。

　アートジャカルタ2018で発表されたアクリル作品は、解体された人物や不格好な家族の肖像に重点を置いて制作されたもので、家族の道徳主義的な視点に挑戦した。

 「絵に描いたような完璧な家族には、つねに見栄があると感じています。なぜ私たちは真実を認め、それに対処することができないのでしょうか？　私たちはつねにコインの裏側についてもっと語るべきだと感じています。対立、痛み、無条件の愛、失望、そして受容。人生には、“完璧な”イメージを維持しようとする以上のものがあるのです」とマーバン。

　今年制作された新作は、多くの美的要素を保持しながらも、構図が抑えられ、生々しさを含み、より自由で正直な絵画を示す原始的な性質を伝えている。この進化はアーティスト個人にも当てはまり、自由なジェスチャーとマーク・メイキングは、より直接的でオープンなコミュニケーション能力に通じている。

　本展のタイトルでもある「Limited But Expandable（限定的だが拡張性はある）」という彼女のメッセージは、現状を真摯に見つめた先にある楽観的な感覚を反映し、理解と成長を可能にする時間への思索を感じさせる。

 「家族関係や人とのつながりを探求するなかで、私たちの選択肢は限られているように見えるかもしれない。しかし、そのような関係性のあいだやなかに意図的にスペースをつくることで、私たちは他者とのつながりを定義する複雑なニュアンスを理解し、ナビゲートする能力を得ることができる」（マーバン）。

　家族や人間のあり方について歳月をかけて積み上げ、問い続けてきたマーバン。ぜひ会場でその制作や思考に向き合ってほしい。