いつの世も、人々を魅了する存在であるジュエリー。この世界において、ミラノを拠点に国際的な活躍を見せる宝飾デザイナー、ジュリオ・マンフレディの個展「ジュリオ・マンフレディ─見えない黄金」が、長崎県美術館で開催中だ。会期は2023年1月22日まで。
ジュリオ・マンフレディは、古代ローマに遡る豊かな歴史が息づく、北部イタリアの都市ピアチェンツァ出身の貴族。1973年に自身のブランド「MANFREDI」を創設し、伝統的な金細工の再興とさらなる発展を標榜しながら、高い芸術性を持つジュエリーを手がけてきた。
また、マンフレディはこれまでイタリア文化財・文化活動省などから重要なプロジェクトを任され、過去の巨匠が後世に遺す優品を再解釈した独創的な連作を制作。1992年には初期ルネサンスを代表する画家ピエロ・デッラ・フランチェスカへのオマージュとして作品群を生み出した。そして2011年に制作したのが、本展出品作でもある巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチの傑作《最後の晩餐》をモチーフとした連作だ。
周知の通り、《最後の晩餐》ではイエス・キリストを囲むように、テーブルに座す12人の愛弟子たちが描かれている。マンフレディは、この美術史上最も重要な作品のひとつと対話。ダ・ヴィンチに関する研究や思索を踏まえ、12+1点の作品を制作した。各作品はイエス・キリストと12使徒をそれぞれ表しており、《最後の晩餐》を数多くの宝石や貴金属を用いて再解釈したものとなっている。
本展は、イタリアで高い評価を得たこの連作プロジェクトを日本で初めて紹介する機会だ。金細工の伝統的な技術を駆使しながら、現代的なアイディアや独創性も吹き込まれたマンフレディのジュエリー。12+1の作品が放つ煌めきを、ぜひ美術館でその目に焼き付けてほしい。
なお、同館では同時開催として常設展「教会のある風景」も開催中。約8000点の所蔵品のなかから選ばれた教会を描いた美術作品が、描かれた教会ごとにまとめて展示されている。マンフレディのジュエリーとも呼応するような展示と言えるだろう。