天才舞踊家ピナ・バウシュの師匠であり、ダンサー・振付家として世界的に知られるクルト・ヨース(1901~79)。 その代表作のひとつである『緑のテーブル』が、3月26日、27日に開催されるスターダンサーズ・バレエ団の「Dance Speaks 2022」のプログラムとして3年ぶりに再演される。
ドイツ人のヨースは戦前、ナチスからユダヤ人の作曲家フリッツ・コーへンとの絶縁を命じられ、それにそむいたことをきっかけに祖国からイギリスに亡命。戦後はドイツに帰国し、フォルクヴァンク芸術大学でピナ・バウシュをはじめ多くのダンサーの育成に心血を注いだ。
そんなヨースの傑作とされるのが、1932年にパリで初演された『緑のテーブル』だ。本作はその名の通り「緑のテーブル」が舞台。ステージに置かれた緑のテーブルでは架空の国の国際会議が行われ、戦争について話し合う身勝手な指導者たちの衝突や、戦争を利用する者の暗躍、それに振り回される兵士やその家族の姿が描かれている。初演から90年が経った現代においても、強いメッセージを与える風刺劇だ。
2019年3月に14年ぶりに再演された際には大きな話題を呼びチケットは完売。翌年2020年にアンコール公演が予定されていたものの、新型コロナウイルスの影響により中止を余儀なくされ、このたび3年越しの上演がついに実現する。「戦争」という言葉がより身近になってしまったいま、本作に込められたメッセージはより強い意味をもって人々に訴えかけるだろう。
また、「Dance Speaks 2022」では『緑のテーブル』のほか『Malasangre』『セレナーデ』も上演。
『Malasangre』は世界的に注目される振付家、カィェターノ・ソトによるラテン音楽にのせた明るく軽快な作品。貞松・浜田バレエ団との共同制作で、日本初演となる。
そして『セレナーデ』は、音楽を舞踊化した純粋な動きだけで構成された、ジョージ・バランシンの代表作だ。
それぞれ異なる強い意思を携えた3演目を一挙に観ることができる貴重な機会。バレエに造詣が深い人も、これから入門したい人も、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。