重要文化財《十二の鷹》を発表当時の姿で見る。国立工芸館の1周年記念展に12羽揃い踏み

金沢市の国立工芸館では、移転開館1周年記念展として「《十二の鷹》と明治の工芸―万博出品時代から今日まで 変わりゆく姿」が開催中。明治〜現代までの工芸作品を通して、変化し続ける工芸家たちの姿を見つめる展覧会だ。会期は12月12日まで。

鈴木長吉 十二の鷹 1893 東京国立近代美術館蔵 撮影=エス・アンド・ティ フォト 重要文化財

 昨年、石川県金沢市に移転開館した国立工芸館(東京国立近代美術館工芸館)。その1周年を記念する展覧会「《十二の鷹》と明治の工芸―万博出品時代から今日まで 変わりゆく姿」が12月12日まで開催されている。

国立工芸館外観 撮影=太田拓実

 本展は、明治から現代までの工芸作品を通して、変化し続ける工芸家たちの姿を見つめるもの。展示は「明治の工芸」「鈴木長吉と《十二の鷹》」「『熱量』のゆくえ~工芸の変わりゆく姿」の3章構成だ。

 第1章「明治の工芸」では、明治の改元以降、廃藩置県、廃刀令、内閣制度の確立など、激動の時代を行きた初代宮川香山をはじめとする工芸家たちの作品を振り返る。

駒井音次郎 鉄地金銀象嵌人物図大飾皿 1876-85頃 登録美術品
七代錦光山宗兵衛 上絵金彩花鳥図蓋付飾壺 1884-97頃 東京国立近代美術館蔵 撮影=アローアートワークス©2005
初代宮川香山 鳩桜花図高浮彫花瓶 1871-82頃 東京国立近代美術館蔵 撮影=アローアートワークス©2005

 第2章「鈴木長吉と《十二の鷹》」は本展のハイライトと言えるだろう。《十二の鷹》とは、明治の名工で帝室技芸員に任命された鈴木長吉(1848〜1919)が制作の指揮をとり完成させた大作で、現在は重要文化財に指定されている。本作は、当時の最高の技に日本の伝統を加味した最新の「美術」として世界に提示するため、1893年のシカゴ万博で発表されたもの。日本古来の技法である色金の技術を駆使した作品として知られるが、近年の研究では当時の最新技術を駆使したのではないかと指摘されている。会場では、近年復元された飾り布とともに、発表当時の姿で展示。このようなかたちでの展示は北陸地域では初めてとなる。

 なお同館では《十二の鷹》全12羽を3Dデータ化。スマートフォンやタブレット端末を使うことで、通常の展示では見ることができない角度でじっくり作品を鑑賞できるのも嬉しい。

鈴木長吉 十二の鷹(1番) 1893 重要文化財 東京国立近代美術館蔵 撮影=エス・アンド・ティ フォト
鈴木長吉 十二の鷹(3番) 1893 重要文化財 東京国立近代美術館蔵 撮影=エス・アンド・ティ フォト
鈴木長吉 十二の鷹(8番) 1893 重要文化財 東京国立近代美術館蔵 撮影=エス・アンド・ティ フォト

 第3章「『熱量』のゆくえ~工芸の変わりゆく姿」は、明治から大正・昭和へと、時代の変化とともに変容していった工芸家たちの表現に着目。表面的な装飾や大きさに代わり、内面へと向かっていく作家たちの熱量を感じたい。

平田郷陽 洛北の秋 1937 東京国立近代美術館蔵 撮影=アローアートワークス©2006
岩田藤七 彩色壺 1935 東京国立近代美術館蔵 撮影=斎城卓
二十代堆朱楊成 彫漆六華式平卓 1915 東京国立近代美術館蔵 撮影=尾見重治©2012

 また本展では、東京国立近代美術館工芸館の開館から移転までの歴史を紹介するコーナーも特設。国立工芸館1周年の節目をお見逃しなく。

編集部

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