昨年、石川県金沢市に移転開館した国立工芸館(東京国立近代美術館工芸館)。その1周年を記念する展覧会「《十二の鷹》と明治の工芸―万博出品時代から今日まで 変わりゆく姿」が12月12日まで開催されている。
本展は、明治から現代までの工芸作品を通して、変化し続ける工芸家たちの姿を見つめるもの。展示は「明治の工芸」「鈴木長吉と《十二の鷹》」「『熱量』のゆくえ~工芸の変わりゆく姿」の3章構成だ。
第1章「明治の工芸」では、明治の改元以降、廃藩置県、廃刀令、内閣制度の確立など、激動の時代を行きた初代宮川香山をはじめとする工芸家たちの作品を振り返る。
第2章「鈴木長吉と《十二の鷹》」は本展のハイライトと言えるだろう。《十二の鷹》とは、明治の名工で帝室技芸員に任命された鈴木長吉(1848〜1919)が制作の指揮をとり完成させた大作で、現在は重要文化財に指定されている。本作は、当時の最高の技に日本の伝統を加味した最新の「美術」として世界に提示するため、1893年のシカゴ万博で発表されたもの。日本古来の技法である色金の技術を駆使した作品として知られるが、近年の研究では当時の最新技術を駆使したのではないかと指摘されている。会場では、近年復元された飾り布とともに、発表当時の姿で展示。このようなかたちでの展示は北陸地域では初めてとなる。
なお同館では《十二の鷹》全12羽を3Dデータ化。スマートフォンやタブレット端末を使うことで、通常の展示では見ることができない角度でじっくり作品を鑑賞できるのも嬉しい。
第3章「『熱量』のゆくえ~工芸の変わりゆく姿」は、明治から大正・昭和へと、時代の変化とともに変容していった工芸家たちの表現に着目。表面的な装飾や大きさに代わり、内面へと向かっていく作家たちの熱量を感じたい。
また本展では、東京国立近代美術館工芸館の開館から移転までの歴史を紹介するコーナーも特設。国立工芸館1周年の節目をお見逃しなく。