SBIアートオークションが、NFTアートに特化した日本初のオークション「NFT in the History of Contemporary Art」を10月30日に代官山のヒルサイドフォーラムで開催する。
同セールでは、文化研究者の山本浩貴をゲストキュレーターに迎え、NFTアートの美術史文脈での位置づけや、それが実現する現代美術の未来について探る。スプツニ子!、ケニー・シャクター、ウダム・チャン・グエン、デヴィッド・オライリー、たかくらかずき、ルー・ヤン(陸揚)、ユゥキユキ、セーワ・アテイファのアーティスト8名による全8ロットの作品が出品され、作品のNFT化は、美術作品へのブロックチェーン証明書発行などで提携するスタートバーン株式会社の協力のもと行われる。
出品作品の選定について主催側は、「美術館の展示やビエンナーレなどで話題になるデジタル作品自体がまだあまり市場に流通していない現状がある。当社はそこにNFTで唯一性を持たせることで、デジタル作品・メディアアートの地位や資産価値が向上する一助になると信じている」とし、「社会的規範、構造、人種、階級、ジェンダーなどに対して興味を持ち、問題提起を行っている作家」や、「今後資産価値が向上していく可能性が高い」作家を選定したとしている。
例えば、デジタル・アートやメディア・アートの領域を牽引する存在としてかねてよりアート界で注目を集めてきたルー・ヤンとたかくらかずきである。こうした芸術ジャンルと結びつけられやすいNFTを美術史的な観点で検証することで、さらに広い視野から現代アートにおけるNFTの意義や可能性を俯瞰することができる。
ウダム・チャン・グエンとデヴィッド・オライリーは、様々なデジタル・テクノロジーを駆使しながら、従来の規範的観念に問いを投げかけてくるようなコンセプチュアルな作品を制作してきたアーティストである。「所有」や「価値」といった概念を問い直すNFTは、まさにコンセプチュアル・アートの作家たちの取り組みに重なり合う部分もあるだろう。
フェミニズムに位置づけられながらも多様性をはらんだスプツニ子!、ユゥキユキ、セーワ・アテイファ。3人の芸術実践は、近年の現代美術史においても重要なキーワードのひとつであり、人種、階級、ジェンダーなどの様々な要素が交差する領域を探る「インターセクショナリティ」の思想を体現しており、現代美術史におけるフェミニズムの重要性を再考する機会となる。
そして理論と実践の両面からアートとNFTの接続について深く考察しているひとりであるケニー・シャクターは、従来のアート界の常識や資本、そしてクリエイター、コレクター、デジタルアートをサポートする人々のコミュニティの関係性を問いかける映像作品《Money, Money, Money》を出品する。
今回のセールを通じて主催側は、新しい動向やプレゼンテーション方法、作品の発表の場が生まれる土壌づくりを目指しており、山本は「本セールが、NFTを連綿と続く芸術の歴史にしっかりと位置づけながら、それがもたらすポジティブな変化を『喜んで受け入れる』ための道を探る一助となることを願っている」と期待を寄せている。