1997年にこの世を去ったグラフィックデザイナー・亀倉雄策。その生前の業績をたたえ、グラフィックデザインの発展に寄与することを目的として99年に設立されたのが「亀倉雄策賞」だ。公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)が賞の運営と選考を行い、毎年、年鑑『Graphic Design in Japan』出品作品のなかから、もっとも優れた作品とその制作者に対して賞が贈られる。第1回の田中一光以来、永井一正、原研哉、佐藤可士和など、そうそうたるデザイナーたちを顕彰してきた。
その第23回は、田中良治のインタラクティブデザイン「Tokyo TDC ウェブサイト」に決定。現在、その受賞記念個展が銀座のクリエイションギャラリーG8で開催されている(7月28日まで)。
田中は1975年三重県生まれ。同志社大学工学部および岐阜県立国際情報科学芸術アカデミーを卒業し、2003年にセミトランスペアレント・デザインを設立。 ウェブサイトの企画・制作から国内外の美術館・ギャラリーでの作品展示までウェブを核とした領域にとらわれない活動を行っており、「オープンスペース」(2008、2015/NTTインターコミュニケーションセンター[ICC])や「tFont/fTime」(山口情報芸術センター[YCAM])、セミトランスペアレント・デザイン「退屈」(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)、「光るグラフィック展」1、2(クリエイションギャラリーG8)の企画・キュレーションを担当。
デジタルメディアにおけるデザインや情報伝達コミュニケーションとその可能性を追求しており、近年では、「トーマス・ルフ展」や「三井本館1929-2019」「The Graphic Design Review」などのウェブサイトの企画・制作も手がけている。
受賞となった作品は、東京タイプディレクターズクラブの団体情報を発信する「Tokyo TDC ウェブサイト」。シンプルなサイトに時折表示されるのは、TDC会員のデザインによる様々な書体のデジタル時計だ。ランダムに大きく画面に表示されるスクリーンセーバーは、その時に居合わせた読み手側の偶然性を双方向に取り入れてたもの。選考委員からは「スクリーンセーバーの仕掛けが目立つが、むしろウェブを成立させるディテールの繊細な作り込みに彼の本質がある」「ウェブサイトは情報のデザインであり、つくる人のセンスが特に問われる。ヴィジュアルな魅力だけではない奥深さがある」と高く評価され、受賞へとつながった。
ウェブサイトで展開されるこの田中の作品を、ギャラリーという空間で立体的に堪能してみたい。