有田の伝統とフランスの人間国宝が出会う。佐賀県で芸術祭「ワザノワ会議」がスタート(前編)

ともに「人間国宝」という制度を持つフランスと日本。やきものの「有田焼」で知られる佐賀県で、同県を拠点とする若手作家とフランス人間国宝の展示や各種イベントを行う芸術祭「有田とフランス人間国宝 『ワザノワ会議』」 が11月18日にスタート。その様子を前後編でお届けする。前編ではオープニングセレモニー、内覧会、レセプションが行われた開幕前日の様子を紹介する。

会場風景より

 手仕事の伝統を継承すると同時に、新たな領域に挑戦する有田町を含む佐賀県の若手作家と、フランス人間国宝がコラボレーションする芸術祭「有田とフランス人間国宝 『ワザノワ会議』」 が11月18日、佐賀県の有田町でスタートした。

 オープニングセレモニーでは、主催者、来賓がそれぞれに挨拶。「ワザノワ会議」の代表・金子昌司は、陶芸での人間国宝の人口がきわめて高い有田において、「2020年の次回開催を目標に、手仕事をつなぐようなイベントを行っていきたい」と、今後の展望を語った。

 いっぽう、「有田にずっと来たかった」と語るのは、フランス大使館文化参事官でアンスティチュ・フランセ日本代表のピエール・コリオだ。コリオは、有田焼とフランス文化の関係に触れ、「今日ここに立って、有田焼が現代に存在していることを感じる。そして、日本とフランスの人間国宝が現代と過去の仲介をしていると実感します」と、感慨を示した。

桂雲寺での除幕式の様子

 「ワザノワ会議」のメイン会場となるのは、日本で最初の陶磁器品評会「有田陶器市」が1896年に開かれるなど、有田焼と深い関わりのある桂雲寺。

 ここでは、シルヴァン・ル・グエン(扇)、ジャン・ジレル(陶器)、ロラン・ダラスプ(金銀細工)、ミシェル・ウルトー(傘)、フランソワ=グザヴィエ・リシャール(壁紙)、ロラン・ノグ(エンボス加工)、ナタナエル・ル・ベール(真鍮細工)、セルジュ・アモルソ(革細工)、エルベ・オブリジ(石材彫刻)、井上萬二、十四代今泉今右衛門、十五代酒井田柿右衛門、十四代中里太郎右衛門、百田暁生、庄村久喜、中村清吾、矢野直人、畑石修嗣が作品を展示する。

会場風景より
会場風景より
会場風景より

 会場デザインを担当したのは、パリを拠点とする建築家・空間デザイナーのリナ・ゴットメ。窯の中の炎、秋の紅葉をイメージした赤色と、畳のサイズから着想を得た半円が特徴的な什器はすべてゴットメが「対話」をコンセプトをベースにデザインしたもの。

 ゴットメは「有田を訪れると、イノベーションは交流の中で生まれることを実感します。そして、伝統に向き合うことで初めて新しいものを生み出せると思います」と語る。

左からシルヴァン・ル・グエン、華仙

 また、注目のコラボレーションも内覧会では初披露された。有田焼の若手創作絵師の華仙(かせん)と、2015年に若干38歳でフランスの人間国宝「メートル・ダール」に認定された扇作家のシルヴァン・ル・グエンが今回特別にコラボレーション。内覧会で初めて完成作品を見た華仙は、「自分の紋様デザインがこんな素敵な扇になることに驚きました。とても嬉しいです」と感激の表情を見せた。

 いっぽうル・グエンは、「扇と陶器につながりを見出すことは少ないかもしれませんが、そのふたつを連携できるようなクリエイションをいま、考えています。その意味でも今回の『ワザノワ会議』は自分にとって素晴らしい機会になりました」と、自作へのフィードバックを語るとともに、日本に対する親しみの気持ちを語った。

レセプションの様子

 2013年、「有田焼で日本酒の乾杯を行うことを推進する条例」が制定されたという佐賀県。内覧会後に行われたレセプションでは、各々が選んだ有田焼のグラスでの乾杯を皮切りとして、煮ごみ、ごどうふといった有田の郷土料理やフランス料理とともに、関係者が交流を楽しんだ。

編集部

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