NEWS / PROMOTION - 2018.8.24

テーマは「女性」。
10月開催「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」を楽しむためのポイント

舞台芸術における「創造」と「交流」の実験の場を目指し、2010年にスタートした「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」。「女性」をテーマとした今年のKYOTO EXPERIMENTの見どころを、プログラムディレクターの橋本裕介のコメントとともに紹介する。会期は10月6日〜28日。

ジゼル・ヴィエンヌ/DACM CROWD Photo by Estelle Hanania

 「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」は、舞台芸術における「創造」と「交流」の実験の場となることを目指し、2010年にスタートした芸術祭。国内外から多様で先鋭的なアーティストを迎え、演劇、ダンスのみならず、美術、音楽、デザイン、建築まで、領域横断的に作品を紹介してきた。

 そして9回目となる今年、KYOTO EXPERIMENTでは初となるテーマが発表された。そのテーマとは「女性」。

セシリア・ベンゴレア&フランソワ・シェニョー DUB LOVE Photo by Laurent Philippe / Divergences

 具体的なテーマがこのように発表されることがほとんどなかったKYOTO EXPERIMENTで、なぜ今回「女性」なのか。プログラムディレクターの橋本裕介はこう話す。「まず、性やジェンダーがいかに社会的、政治的なものであるかと問いたかった。世界はかつてなく流動化しているにも関わらず、わたしたちの振る舞いや意識は、未だに男性対女性/中心対周縁という構図に囚われている。“男性=中心”の不在によって、中心から周縁を眼差すパースペクティブそのものに疑いを差し挟むとき、どのように感じ、振る舞うのか。やや乱暴かもしれないですが、それをはっきりとしたかたちで提示したいと考え、このようなプログラムとしました」。

 そして次のように続けた。「集団芸術としての舞台芸術の家父長制をはじめとする、集団のあり方を問いたかった。集団を統率するのに合理的な家父長制というシステムに疑問を挟まなければ、いつのまにか同じレールをたどっていて、真の意味で集団的創造力を持ちうる舞台作品は生まれないのではないかと思いました」。

写真家・金川晋吾の作品シリーズ「Kanagawa Shizue」を採用した「KYOTO EXPERIMENT 2018」メインビジュアル

 こうした思いからプログラムが構成された今年のKYOTO EXPERIMENTには、女性アーティストや、女性性をアイデンティティの核とするアーティストやカンパニー全12組が集結。

 「女性」というテーマをカラフルにあぶり出し、音楽、空間にこだわりのつまった作品が集うKYOTO EXPERIMENTのおすすめ作品と、その見どころを橋本のコメントとともに紹介していく。
 

一瞬一瞬が、映画の1シーンのような完成度。
ジゼル・ヴィエンヌ/DACM
『CROWD』

ジゼル・ヴィエンヌ/DACM CROWD Photo by Estelle Hanania

 2018年、フランスの批評家協会賞の最優秀賞を受賞したジゼル・ヴィエンヌ/DACMの『CROWD』が、KYOTO EXPERIMENTにて日本初上演。21世紀ヨーロッパの若者たちが繰り広げるパーティが描かれた本作は、一貫して暴力とその表象における諸問題に取り組んできたヴィエンヌ作品のひとつの頂点でもある。「ディティールが精緻で、どの一瞬を切り取っても映画のワンシーンのように見える完成度の高さが魅力。退廃的な雰囲気に満ちたこの作品は、現在のその地に息づく空気をありありと伝えます」。
 

性教育のオルタナティブを目撃する。
She She Pop
『フィフティ・グレード・オブ・シェイム』

She She Pop フィフティ・グレード・オブ・シェイム Photo by Doro Tuch

 ドイツのパフォーマンス集団「She She Pop」は、思春期の少年少女たちの悲劇を描いたフランク・ヴェデキントの戯曲『春のめざめ』と、強烈な性描写が話題を呼びベストセラーとなったE.L.ジェームズの官能小説『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』をモチーフとした作品を発表。本作は、KYOTO EXPERIMENTとの共同製作作品でもある。「ライブカメラで映し出された複数の出演者たちの身体の一部を切り取り、ごちゃまぜにコラージュされ、キマイラのように別の身体のイメージとして出現する。性教育というのは“恥”の感覚を為政者が操作することによって、いくらでも政治的な舞台になりうるのだということをこの作品は表現しています」。
 

狂った作品世界と、物語としての音楽を体感。
マレーネ・モンテイロ・フレイタス
『バッコスの信女―浄化へのプレリュード』

マレーネ・モンテイロ・フレイタス バッコスの信女—浄化へのプレリュード Photo by Filipe Ferreira

 2018年のヴェネチア・ビエンナーレの舞踊部門では銀獅子賞を受賞するなど、豊穣で力強いイマジネーションを湛えた作品に注目が集まるマレーネ・モンテイロ・フレイタス。エウリピデスによるギリシア悲劇『バッコスの信女』をモチーフとした『バッコスの信女―浄化へのプレリュード』では、パフォーマーたちが音を操り、操られ、ダンスの動きとグロテスクな表情、演劇的な身振りを自在に横断する。「グロテスク。泥臭くて一見すると俗っぽいけど、その狂った様は反転して神がかっているようにも見える。聖と俗が表裏一体で描かれている作品です。食肉加工場や医療現場を彷彿とさせる小道具や身振りが、血と肉といったある種の“不浄”を象徴していますが、そこから期待されるナラティブや合理的な解釈から巧みに身をかわしていくさまも目が離せません」。

田中奈緒子 STILL LIVES Photo by Henryk Weiffenbach

 そのほか、インスタレーション作品やパフォーマンスを手がけてきた田中奈緒子は世界遺産の元離宮二条城 二の丸御殿台所で『STILL LIVES』を発表。「光時計」という装置が光と影を生み出し、二条城の特殊な空間も織り込んで、きめ細やかな知覚の物語を紡ぎ出していく。

 また、かつてイギリスとアルゼンチンの間で領土を巡って起こった戦争、フォークランド紛争/マルビナス戦争を描写したロラ・アリアス『MINEFIELD―記憶の地雷原』。本作の出演者は全員その戦争の退役軍人で、舞台上で当時の記憶を再訪することになる。「社会的なトラウマに当事者である出演者が向き合うことで、現実と虚構の間にある記憶のはたらきを問題にしています」と橋本は話す。

ロラ・アリアス MINEFIELD—記憶の地雷原 Photo by Tristram Kenton

 こうして、「女性ならではの視点」や狭義の「フェミニズム」といった観点ではなく、歴史・政治にも着目することで、よりオープンなプログラムが指向されている。

 KYOTO EXPERIMENTでは現在、前売りチケットを発売中。3つの演目を同時に購入することによって割引価格となるセット券や、半券割引などもあるため、公式サイトで詳細プログラムをチェックし、複数の観劇をおすすめしたい。

 秋の京都に集まる、伝統や社会通念を越境する刺激的な作品をお見逃しなく。