今年5月よりクリスティーズが従来の「印象派・近代美術」「戦後・現代美術」イブニングセールを「20世紀美術」と「21世紀美術」イブニングセールに再編。1880年代から1980年代までの作品を取り扱う20世紀美術イブニングセールのハイライト作品を紹介する。
まず、ピカソが1932年に制作した肖像画《Femme assise près d'une fenêtre(Marie-Thérèse)》(1932)は、推定5500万ドル(約60億円)で登場。同作は、ピカソが一連の名作シリーズを制作した頂点に立つ年に、黄金の髪のミューズを描いたもので、マリー=テレーズをモデルに描いた肖像画のなかでもっとも堂々とした印象的な作品だと評価されている。
マーク・ロスコの重厚な作品《Untitled》(1970)は、推定4000万ドル(約43億円)で出品。ロスコが人生の最後の数ヶ月を過ごした1970年に描かれた3点のうちの1点である同作は、鮮やかな色彩への回帰を象徴しており、ロスコはこの作品を自分のもっとも深遠な業績としてとらえていたとされている。
クロード・モネの「ウォータールー橋」シリーズの代表例である《Waterloo Bridge, effet de brouillard》(1899-1903)の推定価格は約3500万ドル(約38億円)。1899年にモネがロンドンで描き始めたこのシリーズは、ロンドンとその霧に包まれた空を光の儚い無形の効果としてとらえており、画家のもっとも重要な主題のひとつだ。
ピート・モンドリアンの《Composition:No.II, with Yellow, Red and Blue》(1927)は、推定2500万ドル(約27億円)で出品。1920年代を通じて新造形主義を探求し、絵画の基本的な要素のみを用いた抽象芸術を制作し続けたモンドリアン。20年代後半に制作された同作は、モンドリアンが純粋な絵画の頂点に達した時期に生まれたものだと考えられている。
そのほか、点描という技法で知られているジョルジュ・スーラの《Paysage et personnages(La jupe rose)》(推定700万ドル〜1000万ドル)《Le Saint-Cyrien》(同300万ドル〜500万ドル)や、アンディ・ウォーホルの《Nine Multicolored Marilyns(Reversal Series)》(同700万ドル)、アルベルト・ジャコメッティの彫刻作品群なども出品予定となっている。
コロナ禍による打撃を経て、再編成されたクリスティーズの20世紀美術のイブニングセールはどこまで数字を伸ばせるか、注目したい。