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欧米中心ではない持続可能なアートを。アートプラットフォーム「SOUTH SOUTH」は何を目指すのか

グローバル・サウス問題をテーマに、欧米中心の美術史から自立した動きを目指すアートプラットフォーム「SOUTH SOUTH」が始動した。参加するTake Ninagawa(以下、タケニナガワ)代表の蜷川敦子の談話も交えて、このプラットフォーム設立の背景や今後の展望を取り上げる。

Take Ninagawaウェブサイトより、「SOUTH SOUTH VEZA」メインビジュアル

 これまでの欧米中心の美術界のあり方に疑問を呈し、グローバル・サウス問題に取り組むアーティストやギャラリー、キュレーター、コレクターのためのプラットフォーム「SOUTH SOUTH」が始動、オープニングイベントしてオンライン・アートフェア「SOUTH SOUTH VEZA」が3月7日まで開催されている。

 「SOUTH SOUTH」は、南アフリカ・ヨハネスブルクのGoodman Galleryが主体となり、5年ほど前から構想されていたもので、日本のアート関係者やギャラリーも賛同。コラボレーターとしてタケニナガワ代表の蜷川敦子、アンバサダーとしてタグチ・アートコレクションの田口美和が名を連ね、ギャラリーではタケニナガワ、タカ・イシイギャラリー、無人島プロダクションが参加している。

 「SOUTH SOUTH」設立の背景にあるのは、欧米中心のアートが抱えているアートのエコシステムの問題だ。ハウザー&ワースやデイヴィッド・ツヴィルナーといった欧米のメガギャラリーの力が強大になり、ギャラリービジネスの範囲を超えた巨大なシステムをつくりはじめている。蜷川によれば、メガギャラリーの覇権主義のもと、若いギャラリーだけでなくエスタブリッシュなギャラリーでさえ存続の難しさに直面するという事実が浮き彫りになり、アートのエコシステムを守らなければならないという風潮がコロナ以前から活発になっていた。こうした問題意識を発端に、南アフリカに拠点を構えるGoodman Galleryが、アートにおけるグローバル・サウス問題を掲げ、「SOUTH SOUTH」という名前でのオンラインプラットフォームをつくる流れとなった。

 蜷川は、日本の現代美術をあつかうギャラリーを運営することは、欧米中心の美術史においては周縁化された立場であるとつねに感じてきたという。1980〜00年代には、周縁地域から中心部である西洋の美術史にいかに食い込めるかという挑戦が盛んに行われてきたが、蜷川によれば「SOUTH SOUTH」の目指すところはそれであってはいけないという。「私の理想とする考え方は、西洋美術に対してどのようにレスポンスしていくのかという方向性ではありません。例えばアジアであれば、アジア独自のアートのディスコースをいかにつくりあげられるのか、ということを探ろうとしています。また、それを民族主義に陥らずに、周りの国々といっしょにつくっていくことが重要だと思います」。

 「SOUTH SOUTH」は、コロナ禍で多く生まれたギャラリー有志が自主的に集まってできたコミュニティとは異なり、組織化されている。Goodman Galleryが主体となって6軒のコラボレーターが集められ、「SOUTH SOUTH」にどういったメンバーが入るべきかを協議してきた。そして、そのメンバーとともに、アーカイブやプログラムをつくり、1年間活動をともにすることを目的としている。

 国内でも展覧会「SOUTH SOUTH TOKYO」が3月2日(開催期間は各ギャラリーにより異なる)まで開催されている。東京をベースにするタカ・イシイギャラリー、タケニナガワ、ブラム&ポー、無人島プロダクションの4つのギャラリーが、それぞれがリプリゼントするアーティストを共同で紹介する展覧会を同時開催するというものだ。

 今後も「SOUTH SOUTH」ではトークイベントや、各国の重要な展覧会リスト等のアーカイブ、アーティストのインタビュー、アジア、南米、アフリカのメンバーをつなぐイベントなどを開催していく予定だ。

 グローバル・サウス問題をテーマに、欧米中心の美術史から自立した動きを目指す「SOUTH SOUTH」。今後の展開に注目したい。

編集部

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