覆面アーティスト・バンクシーが2010年代のヨーロッパ難民危機を題材に描いた作品《Mediterranean sea view 2017》が、7月28日にロンドンのサザビーズで開催されるイブニング・セール「Rembrandt to Richter」に出品される。
3つの油絵で構成される同作は、本来、バンクシーが17年にパレスチナのベツレヘムにオープンした「ザ・ウォールド・オフ・ホテル」のために制作したもので、そのロビーで展示されていた。
今回のオークションのためにバンクシーは同作を再加工し、自らオークションへと出品。その予想落札価格は80万〜120万ポンド(約1.09億〜1.63億円)と推定されており、収益は、ベツレヘムのBASR病院に新しい急性脳卒中治療ユニットの建設や子供のリハビリ機器の購入資金として寄付される予定だ。
風刺的な表現手法で反資本主義や反権力など政治色が強いグラフィティで知られているバンクシーは近年、難民問題や戦争の影響を受けた社会の周縁にいる人々を制作テーマに取り上げている。
15年から16年にかけて、バンクシーはフランス北部の難民キャンプ「カレー・ジャングル」の周りに複数の壁画作品を制作。なかには、シリア移民の息子であり、後にアップル社の共同設立者となったスティーブ・ジョブズを描いたものもあった。また、昨年のヴェネチア・ビエンナーレ会期中には、運河沿いの壁に描かれた救助を求める児童難民の作品を発表し、話題を呼んだ。
今回の作品は、ロマン主義のような風景画にオレンジ色の救命胴衣や浮き袋が描かれており、地中海を渡るなかで溺れた多くの難民を象徴するものだ。
なお同セールには、オールド・マスターズから現代美術まで様々なジャンルの作品が出品。そのうち、個人に収蔵されているオランダ絵画黄金期の巨匠のレンブラントの自画像やフランシス・ベーコン、ゲルハルト・リヒターなどのアーティストによる作品も登場する。