美術評論家連盟が飯山由貴作品の上映不許可に対する意見書を都人権啓発センターと都知事に送付

飯山由貴の映像作品《In-Mates》が東京都人権部によって上映禁止とされた検閲問題。これについて美術評論家連盟が公益財団法人東京都人権啓発センターと小池百合子東京都知事に意見書を送付したと発表した。

美術評論家連盟のウェブサイトより

 美術評論家連盟が「飯山由貴氏《In-Mates》上映不許可に対する意見書」を、3月18日付で公益財団法人東京都人権啓発センターと、小池百合子東京都知事に送付したと発表した。

 本意見書は、東京都人権プラザの主催事業として開催されたアーティスト・飯山由貴の企画展「あなたの本当の家を探しにいく」の附帯事業として上映とトークが予定されていた映像作品《In-Mates》(2021)に対し、東京都人権部が作品上映を禁止する判断を下したことに対するもの。

 意見書では、上映不許可の理由が作品内で言及されている関東大震災時の朝鮮人虐殺を「事実」とすることへの懸念だったことのみならず、その理由自体も隠蔽しようとしたことを批判。「歴史的事実を認めようとしないばかりか、都知事への配慮によって作品を検閲する組織体制は極めて不適切であり、一連の都の対応はさまざまな差別の助長につながる」と抗議した。

 また、書面内では「あいちトリエンナーレ 2019」における「表現の不自由展・その後」の中止の際の議論に触れ、こうした姿勢が表現の自由を脅かしているとともに、「表現の機会を与えるということは、その表現に賛同することを意味するものではありえません」と、公的組織の正統的な役割についての再確認を求めた。

 本件ではすでに、オンラインのプラットフォーム「change.org」で集められた3万筆以上の署名が、東京都人権部に提出されている。検閲の当事者が東京都であることを明確に示したうえで都知事宛てに送付された本意見書。小池都知事の誠実な対応が求められる。

※3月21日、美術評論家連盟の意見書には公益財団法人東京都人権啓発センターの理事長として坂元茂樹氏と記載されていましたが、坂元氏は同センターの理事長ではないため記事中の個人名の記載を削除しました。

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