アーティスト・飯山由貴の映像作品《In-Mates》の上映が東京都総務局人権部より禁じられたことが明らかになった問題で、11月22日に都議会議員向けの上映会と意見交換会が行われた。登壇したのは、飯山と作品に参加したラッパー/詩人のFUNI、そして作中で在日朝鮮人の歴史を解説した東京大学大学院総合文化研究科の外村大。
参加した議員は立憲民主党の竹井ようこ、五十嵐えり、阿部祐美子、そしてグリーンな東京の漢人あきこだ。また、人権部の一部職員もこの会には参加した。
まず、飯山から本問題に係る経緯が説明された。この問題は東京都の指定管理施設である「東京都人権プラザ(公益財団法人東京都人権啓発センター、以下人権啓発センター)」の主催事業として開催されている、飯山の企画展「あなたの本当の家を探しにいく」(~11月30日)の附帯事業に関するもの。本来、この事業として飯山の映像作品《In-Mates》(2021)の上映が予定されていた。しかし、5月12日に人権部から人権啓発センター普及啓発課宛てのメールで上映した場合の配慮の必要性が示され、翌13日、同センターへのメールで上映を不可とする指示が伝えられた。
東京都による検閲といえる内容のメールであり、人権部から飯山への上映中止に関する直接の説明は意見交換会の開催時点ではなされていない。
上映後、議員からは飯山に対して事実確認の質問が飛ぶとともに、「よっぽど過激な作品と思っていたが、事実を歴史として伝えるものであった。それが上映できないのはおかしいのではないか」といった意見が聞かれた。また、人権部が職務上のメールとして検閲を行ったことや、そもそも人権行政の意義を理解していない可能性があるといった点について、議員や外村から意見交換会に参加した人権部に対して厳しい批判も出た。これについて参加した人権部からは「担当ではないので返答は差し控えるが部には持ち帰る」との回答があった。
登壇した外村は次のようにコメント。「人権部は関東大震災における朝鮮人虐殺はなかったという認識に立っている可能性がある。いずれにせよ飯山さんに対して人権部は説明するべき」と改めて人権部の対応を批判。「在日朝鮮人の人たちのなかには様々な問題を抱えながらも必死に生きている人も多い。そういう人々の言葉を聞くということは本当に大事なことだ。人権部の人たちも本当は多くのマイノリティの人々の声を聞いてきたはず。上層部に伝えてきちんと話し合ってほしい」と強調した。
また、FUNIは「シンプルに誰が悪いのか。表現してしまった私たちなのか。それがわからないのが気持ち悪い。誰の責任なのかということを、表現した側としては聞きたい」と「検閲」責任の所在を明確にしたい考えを示した。そのうえで、近年のK-POPを始めとする日本と韓国の若年層の文化的交流に触れつつ、次のように締めくくった。「近年の世界情勢を考えると、文化的な楽しい交流だけでは戦争を避けられないことがわかるはずだ。力を持っている人たちの動きひとつで情勢は大きく変わってしまう。歴史をなきものにしてはいけない」。