1801年から1812年にかけて外交官エルギン卿によってイギリスに運ばれ、現在はロンドンの大英博物館に収蔵されているパルテノン神殿の彫刻コレクション「エルギン・マーブルズ」。これらをギリシャへと返還する動きが活発化している。
ギリシャは1980年代初頭、エルギン・マーブルズの永久返還を初めて正式に要請。以来、イギリス側はこれを拒み、現在に至るまで大英博物館の所蔵品として収まっている。
大英博物館側はギリシャとの新たなパートナーシップを公に呼びかけており、「ギリシャ政府を含む誰とでも、それを進める方法について話し合うつもりだ」との声明を昨年12月に発表。「私たちは法律の範囲内で活動しており、素晴らしいコレクションを解体するつもりはない」としながら、「世界中の国や地域社会との前向きで長期的なパートナーシップを模索しており、それはもちろんギリシャも含まれる」との姿勢を見せている。
英大手メディアの「テレグラフ」によると、これらの返還をめぐり大英博物館がギリシャ政府と「建設的な話し合い」を行っており、両者の間で合意書が作成され、今年初めにもいくつかの作品が「貸し出される」ことになるかもしれないという。いっぽうで「ガーディアン」はギリシャ政府高官のコメントとして「そのような取引はない」とも報道しており、事態はまだ不透明だ。
パルテノン神殿の彫刻については、バチカンが昨年末、バチカン美術館所蔵の一部をギリシャ正教会大主教に寄付することを発表。事実上の返還が決まった。
文化財返還の動きはヨーロッパで徐々に広がりを見せており、2021年にはフランスが植民地時代にベナンから略奪した美術品26点を返還。オランダも同年、略奪文化財を返還する方針を明らかにしている。昨年にはイギリス・ロンドンのホーニマン博物館が19世紀に存在したベニン王国(現・ナイジェリア)から略奪した工芸品の返還を発表した。またルーヴル美術館が1933年〜45年のあいだに購入した美術品の出所を調査するためにサザビーズの返還部門と協定を結ぶなど、これまでにない動きも見られる。