「KYOTOGRAPHIE 2022」のテーマは「ONE」。10人の女性写真家によるプログラムも

2022年で第10回目の開催を迎える「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2022」が、来年のテーマを「ONE」に決定した。ギイ・ブルダンやアーヴィング・ペン、イサベル・ムニョスなど国際的な写真家の展示のほか、10人の日本人女性写真家の作品を紹介するプログラムも行われる。会期は2022年4月9日〜5月8日。

プリンス・ジャスィ Responsibility II 2018 Fujiflex print

 2013年より毎年、京都市内各所を舞台に開催されている写真に特化した芸術祭「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」。その第10回目を迎える2022年のテーマは「ONE」に決定した。

 今回のテーマについてKYOTOGRAPHIEの共同設立者/共同代表のルシール・レイボーズと仲西祐介は、次のようなメッセージを寄せている。「仏教用語で、『一即一切、一切即一』という言葉があります。ひとつの微塵(個)がそのまま宇宙(全体)を表し、また宇宙はひとつの微塵も取りこぼさず、個と全体が有機的に合わさった壮大なものを表す。すなわち、あらゆるものはひとつにつながり、関わり合って存在しているということを言い表しています」(プレスリリースより)。

 コロナ禍の影響により2年連続9月開催となった同芸術祭だが、来年は従来の春の開幕となり、2022年4月9日〜5月8日の会期で京都文化博物館 別館や京都市美術館別館、琵琶湖疏水記念館など京都市内の複数会場で開催される。

岡部桃 ILMATAR 2020 Archival color C-print © Momo Okabe

 京都文化博物館 別館では、今年9月から10月にかけて銀座のシャネル・ネクサス・ホールで個展が行われたフランスを代表するファッションフォトグラファー、ギイ・ブルダンの作品を展示。同展の出展作品に加え、スケッチやストーリーボード、さらには伝説的な日本人のファッションモデル・山口小夜子とのコラボレーションによる写真や映像作品を紹介する。

 京都市美術館別館では、アメリカの写真家アーヴィング・ペンの展示を行い、アーヴィング・ペン・ファウンデーションからパリのヨーロッパ写真美術館(MEP)に寄贈されたコレクションを出品予定。なかには初めて一般公開される作品も含まれており、ペン自身によるオリジナルプリントを鑑賞できるまたとない機会となる。

 誉田屋源兵衛 黒蔵、奥座敷では、スペインの写真家イサベル・ムニョスの作品を紹介。ムニョスは「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2017」への参加をきっかけに、奄美大島でダンサーの田中泯と京都の老舗帯匠・誉田屋源兵衛の十代目当主山口源兵衛を撮影。今回は写真作品や映像作品に加え、当時撮影された作品をムニョス自ら和紙にプラチナプリントを施し、誉田屋の職人によってその和紙を糸に裁断し、極細の絹糸と一緒に織られた「写真の織物」を発表する。

イサベル・ムニョス Untitled. Series Japan © Isabel Muñoz 2017

 特筆すべきは、HOSOO GALLERYで行われる、将来的に活躍が期待される10人の日本人女性写真家の作品を紹介するプログラム「10/10 女性写真家たちの祝祭」。

 ルシール・レイボーズと仲西祐介が、インディペンデント・キュレーターのポリーヌ・ベルマールと共同でキュレーションを行ったこの展示には、地蔵ゆかり、林典子、細倉真弓、稲岡亜里子、岩根愛、岡部桃、清水はるみ、鈴木麻弓、殿村任香、𠮷田多麻希が参加する。

 例えば、身体や性、人と人工物など移り変わっていく境界線を写真と映像で表現する細倉真弓は、ゲイ雑誌の切り抜きや男性彫刻の写真、自身が撮影した写真から男性をとらえた一枚の巨大なデジタルコラージュ作品《NEW SKIN》を発表する。

細倉真弓 NEW SKIN © Mayumi Hosokura

 第44回木村伊兵衛写真賞を受賞した岩根愛は、福島の避難区域の桜を撮ったことをきっかけに、三春、北上、遠野、一関、八戸の5ヶ所で桜を撮影し、同時に各地の伝統芸能の舞をとらえた新作シリーズ「A NEW RIVER」をあわせて展示を構成する。

 2019年「キヤノン写真新世紀」優秀賞や、KYOTOGRAPHIEのサテライト・プログラムのひとつとして2021年「KG+ SELECT」グランプリを受賞した𠮷田多麻希は、継続中のプロジェクト「Negative Ecology」を展示。北海道で撮影した野生動物の写真を現像段階で洗剤などの人工的な薬品と混ぜて現像され制作されたネガフィルムは、人間の生活が自然界を侵食していくことを表したメタファーでもある。

𠮷田多麻希 Negative Ecology © Tamaki Yoshida

 そのほか、両足院(建仁寺山内)や琵琶湖疏水記念館、出町枡形商店街などの会場では、昨年逝去した写真家・奈良原一高の「禅」シリーズや、フォトジャーナリストのサミュエル・ボレンドルフが環境汚染に焦点を当てた「Contaminations」シリーズ、そして1995年ガーナ生まれのビジュアルアーティスト、プリンス・ジャスィの作品などを展開する。

 KYOTOGRAPHIEのサテライト・プログラムとして、これから活躍が期待される写真家やキュレーターの発掘と支援を目的に、2013年よりスタートした公募型アートフェスティバル「KG+」も京都市内各所で開催。そちらもあわせてチェックしたい。

編集部

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