2008年にスイスの「Pictet(ピクテ)」グループによって創設された国際写真賞「Prix Pictet(プリピクテ)」が、その第9回目をアメリカの写真家サリー・マンが受賞したことを発表した。
同賞は約18ヶ月のサイクルで開催されるもので、毎回ひとつのテーマを設け、サステナビリティに関する議論や対話を引き出すことを目的としている。受賞者には賞金10万スイスフラン(約1200万円)が授与される。
今回のテーマは「Fire(火)」。世界各地5大陸にわたって選出された13名のショートリスト作家は、このテーマをもとにこれまでの個人的な体験や世界的な出来事をきっかけに制作した作品を出品している。
選出された作家は、ジョアナ・ハッジトマス&ハリール・ジョレイジュ(レバノン)、川内倫子(日本)、サリー・マン(アメリカ)、クリスチャン・マークレー(アメリカ/スイス)、ファブリス・モンテイロ(ベルギー/ベナン)、リサ・オッペンハイム(アメリカ)、マク・レミッサ(カンボジア)、カーラ・リッピー(メキシコ)、マーク・ラウェーデル(アメリカ)、ブレント・スタートン(南アフリカ)、デヴィッド・ウゾチュクゥ(オーストリア/ナイジェリア)、横田大輔(日本)。
サリー・マンの受賞作「Blackwater」(2008-12)シリーズは、アメリカで最初の奴隷船が停泊したバージニア州南東部のグレート・ディスマル・スワンプを襲った大規模な自然火災と漆黒の煙をとらえたもの。そこで遭遇したすべてを焼き尽くすような山火事とアメリカの人種間対立を並列に表現している。
マンは、「グレート・ディスマル・スワンプの火事は、南北戦争、奴隷解放、私の家族も関わった公民権運動、1960年代後半の人種不安、最近では2020年の夏といったアメリカの人種対立の大火を象徴しているようだった」と語る。
今回の審査委員長を務めているデビッド・キング卿(ケンブリッジ大学・気候修復センター設立時会長)は声明文で、「サリー・マンのシリーズは、歴史的な写真プロセスを見事に再利用して、ゾッとするような現代のストーリーを伝えている。豊かな議論の末、審査員は全員一致で彼女を第9回プリピクテの受賞者にふさわしいと判断した」とコメントしている。
なお、13名のショートリスト作家による作品を紹介する展覧会はロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート美術館と東京都写真美術館で開催中。東京の会期は2022年1月23日まで。