チェコ出身でアール・ヌーヴォーを代表する芸術家、アルフォンス・ミュシャ(1860〜1939)。そのコレクションを所蔵する堺 アルフォンス・ミュシャ館が、ミュシャにとって幻のプロジェクトとなった《クオ・ヴァディス》(1904)の絨毯化に挑む。
ミュシャの《クオ・ヴァディス》は、ポーランドの作家シェンキェヴィチによる同名小説を主題とした油彩画。キリスト教徒の迫害と信仰がテーマの物語のなかで、ミュシャは脇役の恋模様を題材に選び、暴君ネロ統治下の古代ローマの貴族邸宅の一室で奴隷として雇われた少女が、思いを寄せる主人ペトロニウスをかたどった大理石像に口づけるシーンが描かれている。
この作品は、ミュシャがデザイナーから画家へと転身をはかりはじめて本格的に取り組んだ油彩画。1910年頃、ミュシャのビジネスパートナーであった建築家が絨毯工場を立ち上げようと計画しており、《クオ・ヴァディス》はその最初の絵柄として使用されるはずだった。しかしこの計画は実現せず、昨品は一旦ミュシャの手に戻った。しかし戦後は長らく所在が不明となり、40年前ほど前に偶然発見。その後、堺 アルフォンス・ミュシャ館開館のきっかけとなったミュシャコレクターで実業家の土居君雄が入手し、現在は堺 アルフォンス・ミュシャ館(堺市)が所蔵している。
今回、同館はこの《クオ・ヴァディス》の絵柄をもとに、伝統的な手織り 技「堺緞通」で絨毯として織りあげるプロジェクトをスタート。クラウドファンディングサイト「READY FOR」で資金調達を目指す。目標金額は第一目標が150万円、最終目標は300万円。集まった資金は絨毯の製作費のほか、記録・調査・展示・広報等に使用される。
絨毯製作は、現在唯一堺緞通の受注生産を行っている大阪刑務所に依頼。完成作は、2023年12月より開催予定の特別展「クオ・ヴァディスの謎(仮)」展で、原画と同じ空間で公開する。
同館はこのプロジェクトを通し、110年前幻となったミュシャの絵画の絨毯化を実現させるとともに、《クオ・ヴァディス》の作品そのものの魅力の発信と、「堺緞通」の伝統・継承に新たな展開を与えることを目指すという。
寄附は3000円から30万円までの全6コース。すべてのコースに金額に応じた返礼品が用意されている。詳細はプロジェクトサイトを確認してほしい。