芸術家・建築家の荒川修作+マドリン・ギンズが設計した「死なないための住宅」である、「三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー」(以下、三鷹天命反転住宅)。荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所が、この住宅を歴史的建造物として次世代に繋げるためのクラウドファンディングを9月13日よりスタートさせた。
東京都三鷹市にあるこの住宅は、全9戸からなる世界で初めての集合住宅。2005年の竣工以来、一部を賃貸住宅として、一部を教育・文化プログラムを世界へ発信するスペースとして利用されてきた。
昨年、同住宅は竣工15周年を迎えて大規模な修繕計画を予定していたが、新型コロナウィルスの影響によりすべてのイベントが中止となり、また定期的に開催されてきた見学会や短期滞在プログラム(ショートステイ)の利用者も激減した。そのため、修繕計画の見直しだけでなく、経済的にも苦しい状況が続いている。
荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所は声明文で、「このままでは天命反転住宅を体験していただく機会を失い続けると同時に、修繕が必要な箇所のダメージだけが拡がってゆくという、建物にとっての危機が増してゆくばかりだ」と危機感を訴えている。そのため、「天命反転住宅の天命を反転させるべく、初の試み」としてのクラウドファンディングをローンチさせた。
実施期間は9月13日〜12月10日で、目標金額は1000万円。国内最大級のクラウドファンディング・プラットフォーム「Motion Gallery」に立ち上げられたこのプロジェクトでは、3000円から100万円までのコースが設定。それぞれのコースの応じ、たてもの見学会の参加チケットやショートステイの招待券などが返礼品として贈与される。
募集される資金は、建物の安全面からいますぐ取り掛かるべき補修工事として使用予定。もし支援金額が1000万円を上回った場合には、3棟に分かれた住居棟全体の補修など集まった金額に応じて追加工事を行い、最終的には建物全体の補修工事完了を目標としている。
荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所代表の本間桃世は、今回クラウドファンディングについて次のような言葉を寄せている。「未来を担う子どもたちへ真に生きる力を養う場を建設することは地球に生きる私たちの大きな使命です。第二の、第三の『天命反転住宅』実現のために、初代の『三鷹天命反転住宅』を生かし続けたい。どうかみなさまのお力をお貸しください」。