島根県古代文化センターが所蔵する『出雲国風土記』の写本。そのうち3点が、新日本古典籍総合データベースで公開された。
『出雲国風土記』は713年、元明天皇により編纂が命じられた「風土記」のひとつで、各地の風土記のなかでもほぼ完本として現在まで伝わる唯一のもの。地名の由来や特産物、土地に伝わる伝承などが記されており、今回公開されたのは、いずれも江戸時代に書き写された写本3点だ。
ひとつが「古代文化センター本」で、江戸時代前期に書写されたもの。他の写本との異同を記した約300点もの付箋が貼付されており、現存するなかでは、比較的古い『出雲国風土記』写本のひとつだ。
もうひとつは「勧修寺家(かじゅうじけ)本」で、江戸時代中期頃に書写された。「勧修寺」の蔵書印があり、『豊後国風土記』と合冊された写本だ。
そして最後が「菅野本」で、国文学者の菅野雅雄の旧蔵本であり、2019年に所蔵者から寄贈を受けたものだ。江戸時代に書写されたもので、朱墨による多数の書き込みや修正がある。
鮮明なカラー画像を自由に拡大して細部まで見ることが可能となっており、『出雲国風土記』の世界に迫ることができる。