新型コロナウイルスの影響で、昨年休館のまま閉館したメトロポリタン美術館の分館であるメット・ブロイヤー。その建物にニューヨークの美術館「フリック・コレクション」が3月18日、分館となる「フリック・マディソン」をオープンさせることが発表された。
ハンガリー出身の建築家マルセル・ブロイヤーによって設計されたこの建物は1966年に完成したもので、当初はホイットニー美術館として開館。2015年、ホイットニー美術館の移転に伴ってメトロポリタン美術館は8年間リースし、16年に分館としてメット・ブロイヤーを開館。23年まで使う予定だったが、同館は予算削減のため、20年にこの建物をフリック・コレクションに譲渡することを決定した。
いっぽうのフリック・コレクションは、1935年にマンハッタンのアッパー・イースト・サイドにある実業家ヘンリー・クレイ・フリックの邸宅に開館した美術館。ヨハネス・フェルメールの3作品をはじめとするオールドマスターの絵画や、彫刻、家具、陶磁器、装飾美術など数多くの作品を収蔵している。2014年に建築物の改修計画を発表し、昨年3月にニューヨークにおける新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて一時的に休館。昨秋からは改修工事が始まり、現在に至るまで休館が続いている。
同館はこれから約2年間フリック・マディソンを拠点に、そのコレクションから選りすぐられた作品を年代別・地域別に紹介。3階にわたる展示室では、フェルメールやレンブラント、ゴヤ、ベリーニ、ベラスケス、ターナーなどの絵画や彫刻作品に加え、17世紀の絨毯など装飾美術や新規収蔵の作品を一堂に展示。また、同館所蔵の美術史資料を閲覧するための閲覧室も予約制でオープンする予定だ。
毎週木曜日から日曜日までに開館予定の同館では、新型コロナウイルス感染拡大防止対策を講じるいっぽうで、オンラインやバーチャルプログラムも展開。昨年公開して100万回以上の再生回数を記録した週刊ビデオシリーズ「Cocktails with a Curator」や、学校や小グループ向けのオンライン訪問などもプログラムは継続して公開予定となっている。
分館について、同館館長のイアン・ウォードロッパーは声明文で次のようにコメントしている。「昨年3月に休館して以来、フリックは示唆に富んだデジタルプログラムを通じて、地元、全国、そして世界中の観客との接触を維持することに成功してきたが、一般の方々との直接の対面での交流は非常に懐かしいものとなっている。私たちは、新鮮な視点にインスピレーションを与えてくれた舞台で、ふたたびコレクションを対面で共有できることを楽しみにしている」。