新型コロナウイルス感染症の影響が深刻だ。アメリカの博物館が財源枯渇に直面しており、3分の1が再開できない可能性があることが、アメリカ博物協会(American Alliance of Museums、AAM)によって発表された。
AAMは6月、アメリカ国内750人以上の博物館長を対象に調査を実施。そのうち、33パーセントの館長は、来秋までに永久閉鎖する「重大なリスク」がある、または運営継続できるかどうか「わからない」としている。また87パーセントの博物館の財政運営準備金が12ヶ月以下であり、56パーセントが6ヶ月以下であることも確認されている。
AAMの会長兼CEOであるローラ・ロットは、「パンデミックによって博物館の収益は一夜にして消えてしまい、悲しいことに、その多くは回復しないだろう」と悲観的な態度を示す。「今後数ヶ月のうちに部分的に再開されたとしても、コストは収入を上回ることになり、多くの博物館には財政的なセーフティーネットがない。博物館が直面している苦痛は、単独ではない。1万2000の博物館の永久的な閉館は、地域社会、経済、教育システム、そして私たちの文化史に壊滅的な打撃を与えるだろう」。
AAMの調査によると、アメリカの博物館は72万6000の直接および間接雇用を生みだしており、毎年500億ドル(約5兆3000億円)も経済に貢献している。博物館が再開できたとしても、40パーセント以上が職員の削減を計画しており、安全に再開できるようにするために追加の資金を費やす必要があるという。
また、博物館は一般市民や学生、教師などに教育プログラムを提供することで、教育においても重要な役割を果たしている。しかし、今回の調査で64パーセントの博物館は、大幅な予算削減によって、教育およびその他の公共サービスが削減されると予想している。
なお、アメリカではギャラリービジネスも大きな打撃を受けている。アートディーラー協会(ADAA)が5月にアメリカ国内の主要ギャラリーを対象に実施した調査では、2020年第1四半期でアメリカ国内のギャラリーの収益は31パーセント減。第2四半期の収益は73パーセント減少と予想されている。
この危機を乗り越えるため、アメリカの博物館もギャラリーも連邦政府、州政府、地方自治体から新たな資金を獲得しようと取り組んでいる。ロットによると、アメリカの博物館が政府から受け取っている資金は運営資金全体の25パーセントであり、民間からの短期支援も必要不可欠な状態だ。ロットは「博物館を救うためには、公私の資金供給が必要なのだ」と強調している。