新型コロナウイルスの影響を受ける芸術家などへ支援のニーズを明らかにするために、京都市が5月17日を期限に意見を募っていた「京都の芸術家等の活動状況に関するアンケート」の結果が公開された。同アンケートには、美術、音楽、演劇、舞踊、伝統芸能、生活文化など幅広い分野と、創作発表をする表現者、教育研究、技術提供など多様な業務形態の人々から回答が寄せられた。
回答者の内訳は、文化芸術を生業とし、かつ文化芸術活動のみに従事する者(生業であり専業)が回答者の5割を占めた。分野ごとでは「伝統芸能・その他芸能分野」の75パーセントが専業でもっとも高くなっている。
新型コロナウイルスの影響と経済損失については、個人から1112件、団体・事業所から280件の回答があり、経済損失は個人で平均88万2000円、団体・事業所では平均364万5000円となった。回答金額の合計は個人が8億9000万円、団体・事業所の合計が8億7000万円となっているが、回答分のみなので実際にはさらに大きな経済的損失が発生していると考えられる。
これらの損失は、個人では創作発表の活動費、道具等の購入費、食費や日用品費に、団体・事業所では事業費、事業所・施設の管理費や維持費、設備等の購入費に影響を及ぼしている。
現在困っていることについては、「創作発表の機会が失われた」という回答が81.1パーセントに及ぶ910件となった。「生計が立てられない」と回答した人も5割を超えるなど切実な状況であり、団体・施設でも「公演や展覧会、イベント等の延期や中止による損失」が7割、「経営の見通しが立てられない」が5割を超えるなど厳しい状況が改めて明らかになった。
個人、団体等ともに「文化芸術活動へのモチベーションの低下」という精神面の不調から「事務所、施設等の維持ができない」というハード面の不安まで、困っていることの内容は多岐にわたっている。
この深刻な状況を受け、必要とされる支援としては「損失の補填」が個人53.7パーセント、団体等51.8パーセントと、もっとも多い回答となった。ほかにも「活動の再開に向けた事業資金支援」「文化芸術活動を生かした機会・場づくり」「オンライン展開のための支援」といった回答の比率が高い結果となった。
さらに、「支援策に関する相談・情報提供」、「文化芸術活動に関する情報発信、周知・啓発、提言」など、相談先や情報発信に関するニーズも高く、包括的な支援が求められている。
ほかにも自由回答からは、「実演家のみならず、舞台に携わる裏方さん達の収入も皆無であろうと思われます。舞台 ・照明・音響さんが(中略)残れなければ、今後の舞台活動に支障をきたすと思います」「4月以降、昨年比較で95パーセント以上の売り上げが減少している。このままでは会社の維持もおぼつかない」「バレエ、ダンス、演劇、オペラなどのイベントが始まらないことには、アーティストはいてもイベントを支えるサポートスタッフ業界は潰れるしかない」「法人格のない任意団体が使えるコロナ関連の支援がほとんどないので、何とかしてほしい」といった声が集まった。
すでに補正予算のうち3億円を充てた文化芸術活動緊急奨励金を実施している京都市だが、このアンケート結果を受けて、行政として必要な施策を検討し、次の施策もスピード感をもって進めるとしている。