文化政策やアートビジネスに関するコンサルティングを専門に行う一般社団法人芸術と創造は、日本人1万人を対象に新型コロナウイルスに関する公的文化支援、あいちトリエンナーレ問題等に関する世論調査を実施。その結果を公表した。
今回の調査では、大きく分けて「文化芸術に係る公的支援について」「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う公的支援について」「行政による文化芸術に係る助成・補助や主催事業における関与について」の項目を質問。
文化芸術への予算配分
まず「文化芸術に係る公的支援について」では、「文化芸術は重要だ」と考えている人は73パーセントと多いものの、国・自治体の予算を文化芸術に優先的に「振り分けるべきではない」(43パーセント)が、「振り分けるべきである」(34パーセント)の割合を上回った。
分野間の比較では、医療・福祉・介護、防災・減災、子育て、教育などに優先的に公的支援を行うべきと考えられており、「文化芸術の振興」を挙げた人はわずか6パーセントにとどまっている。
文化芸術に係る趣味・仕事・経験などを持つ人が「振り分けるべき」と考える傾向にあるいっぽう、「40代」「高年収」「高学歴」の人や「小さな政府」を志向する人は「振り分けるべきではない」という考えを示している。
新型コロナに伴う公的支援
次に、「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う公的支援について」では、半数以上の52パーセントが新型コロナウイルスの感染拡大に伴う文化芸術に従事している団体・個人への公的支援に賛成を示した(反対は25パーセント)。
文化芸術のジャンル別では、舞台芸術の興行(音楽・演劇・ミュージカル・演芸等)がもっとも優先度が高く、次いで映画(映画館・映画配給・映画制作等)、公立を除く美術展の開催(画廊・ギャラリーを含む)。
しかしながら優先的に支援すべき分野全体では、医療・介護、外食業・飲食業、宿泊業、保育、物流サービス、鉄道・航空、スーパーマーケットといった分野の優先度が圧倒的に高く、舞台芸術の興行でも10.1パーセント、美術展の開催(画廊・ギャラリーを含む)に至ってはわずか3.8パーセントという数字だった。
行政による文化への関与
今回の世論調査でもっとも特徴的なのが、「行政による文化芸術に係る助成・補助や主催事業における関与について」の項目だ。
まず、「行政による助成・補助を受けた事業」では「外部の有識者等による審査会で助成先が決定されるべき」だと考える人が半数以上。「国・自治体は『来場者の安全性の観点から』事業内容に指示すべき」だと考える人も約半数に上った。「『不快な表現が含まれる』作品は展示されるべきではない」という声も約40パーセントに上っている。
いっぽう、「行政がすべての事業費を負担する主催事業」においては、「行政は政治的な観点から事業内容に指示すべきではない」(40パーセント)、「政治家(首長含む)は展示・上演の中身に関与すべきではない」(52パーセント)となったが、「『不快な表現が含まれる』作品は展示されるべきではない」という意見も38パーセントを数えている。
この調査では、行政と文化芸術との関係性がひとつの焦点になった「あいちトリエンナーレ2019」についても回答を得ており、回答者のうち約半数の52パーセントが「あいトリ」関連の議論を認知。認知していた人々は、半数以上が「国・自治体が政治的な観点から事業の内容に関与すべきではない」との考えを示していることがわかった。