文化庁の2019年度予算案が1167億900万円となった。これは、18年度予算の1082億2900万円から84億8100万円(7.8パーセント)の大幅増となるもので、18年度の対前年度比増(3.3パーセント)を大きく上回る数字だ。
この予算増の要因となったのが、2019年に入って導入された「国際観光旅客税(「出国税」)」の財源。これの一部が文化庁に配分されたことが大きく影響している。
そしてこの新税を財源としているのが、今回の予算(案)の大きな柱として掲げられている「文化資源の“磨き上げ”による好循環の創出(171億600万円)」だ。
これは、文化財をはじめとする文化資源に付加価値を付け、「より魅力あるものにすべく”磨き上げ”る取り組みを支援し、観光インバウンドに資するコンテンツづくりを進めるとともに、先端技術を駆使した効果的な発信を行い、観光振興・地域経済の活性化の好循環を創出する」というもの。
具体的な取り組みとして掲げられているのが、「『日本博』を契機とした文化資源による観光インバウンドの拡充」(34億6600万円)と「Living History(生きた歴史体験プログラム)事業」(34億7400万円)の2つ。
前者の「『日本博』を契機とした文化資源による観光インバウンドの拡充」は、官邸主導の大型国家プロジェクトで2020年の開催を目指す「日本博」を前提としたもの。文化庁は「日本各地域の文化観光資源を1年を通じて体系的に創成・展開するとともに、国内外への戦略的広報を推進し、文化による『国家ブランディング』の強化、『観光インバウンド』の飛躍的・持続的拡充を図る」としている。
では後者の「Living History(生きた歴史体験プログラム)事業」とは何か? 文化庁の資料によると、同事業には2つの柱がある。
ひとつは、文化財建造物や史跡等の文化財に新たな付加価値を付与し、より魅力的なものとするための取り組み=「Living History(生きた歴史体感プログラム)」を支援し、特別料金の徴収等の仕組みを構築するというもの。
もうひとつは、「Living History(生きた歴史体感プログラム)」実施地域や日本遺産等の外国人観光客が見込まれる地域で一体的な整備などを行い、観光拠点としての“磨き上げ”を実施するというものとなっている。
これらに加えて注目したいのが、市場活性化関連の予算だ。19年度予算案では、18年度に新規事業として5000万円が計上された「アート市場活性化事業」が、「アート市場の活性化と現代アートの国際発信」(1億9200万円)に盛り込まれるかたちとなった。
ここでは「アート・プラットフォームの形成」と「日本アートの国際発信力強化」それぞれに9600万円を計上。「アート・プラットフォーム形成」では、「アートシーンに関する動向調査」や「現代日本アートの国際的評価を高める海外有力美術館における展覧会の企画」などを含めた「アート・プラットフォーム形成事業」「現代アートの国際展開シンポジウムの開催」「現代アートの国際展開に関する調査研究の実施」の3つを展開する。
いっぽう「日本アートの国際発信力強化」においては、「国際拠点化・現代作家発信推進企画展」「海外アートフェア等参加・出展等」を軸に、現代日本作家の飛躍を後押しする個展等による国際発信を強化するとともに、海外の主要アートフェアや国際展での発信支援など、現代日本の美術の国際的評価を高める取り組みを強化するという。