「タパ」は南太平洋の島々で作られてきた樹皮布で、機織りの伝播が限られた海洋で孤立した地域の独自の布文化として発達した。いっぽう、東西アジアでは身近な羊の毛を利用した不織布として、縮絨させシート状にする圧縮フェルトづくりが続けられている。タパやフェルトはどちらも衣服としてだけでなく、儀式や結界、住居装飾などの用途で、暮らしに密接に関わりながら利用されてきた。
本展では、南太平洋の島々に30年以上通いタパ研究を続ける福本繁樹と、主に90年代に東西アジアで圧縮フェルトの技術調査を行った長野五郎によって収集された貴重な資料約60点を通して、織物以前から伝わる不織布の世界を紹介する。
タパの展示では、パプアニューギニア、フィジー、トンガなど地域ごとのタパを紹介、制作工程の違いから表れるそれぞれの文様や色合いの違いを比較する。また、フェルトのコーナーでは、新疆ウイグル自治区カシュガルとトルコのコンヤで制作された圧縮フェルトを紹介。伝統的な技法による敷物から希少な遊牧民のマントまで、様々な用途のものが並ぶ。世界のフェルト作家が伝統技法を学びにくるというトルコ・コンヤの職人のもとで制作された敷物も展示される。
そのほか、タパやフェルトの制作に使われる材料や道具、その製作工程のスライドショーも合わせて展示。原初の布に込められた、民俗の伝統と技術の継承を紐解く展示となっている。