彫刻家・戸谷成雄(1947〜)はこれまで彫刻の原理とその構造を追求する作品を展開してきた。美術館や画廊での個展開催のほか、2000年の「光州ビエンナーレ」、12年の「キエフ国際ビエンナーレ」などの国際展にも出展。09年には紫綬褒章を受章するなど、数々の評価を受けている。そんな戸谷の展覧会「戸谷成雄―現れる彫刻」が、自身が教授を務める武蔵野美術大学 美術館・図書館で開催されている。
1970年代に彫刻概念の再定義を試みた作品シリーズを発表するなど、戸谷はもの派以降解体された「彫刻」の再構築と新たな可能性を探ってきた。また自身により提示された「表面」「境界」「関係」「影」「存在」といった概念の問題を探究し、見えるものと見えないもの、かたちのあるものとかたちのないもの、といった二つの領域のせめぎ合いの中で立ち現れてくる発現の瞬間を、「彫刻」として存在を保持しようと試みる。
この展覧会では戸谷成雄の彫刻を、このようなせめぎ合いの中にあるものととらえ、「現れる彫刻」をテーマに近年の代表的な大型作品を中心とする約20点を展示。初個展作《POMPEII ‥ 79〈Part1〉》(1974)を起点に、彫刻への根源的な問い、彫刻の発現とその新たな可能性を探る。また、彫刻の構造が概念的に示された大型彫刻では、戸谷の思考の内部に入り込むような体感もできる。