「エクスパンデッド・シネマ再考」で映像の未来の可能性をあぶり出す

60年代の実験的な上映形式「エクスパンデッド・シネマ」を検証する「エクスパンデッド・シネマ再考」展が、東京都写真美術館にて開催される。会期は8月15日〜10月15日。

シュウゾウ・アヅチ・ガリバー シネマティック・イリュミネーション 1968〜69 インターメディア 東京都写真美術館蔵 18台のスライド・プロジェクターによる360度映写を本展で再現。

 「エクスパンデッド・シネマ(拡張映画)」とは、従来の映画館でのスクリーン投影方法とは異なった手法で上映される映画を指すもので、1960年代半ばから、美術家や実験映像作家によって、欧米を中心に展開されてきた。

松本俊夫 つぶれかかった右目のために 1968 マルチプロジェクション(16ミリフィルムより変換) 東京都写真美術館蔵
日本のエクスパンデッド・シネマの代表作。ドキュメンタリーとアヴァンギャルドを越境するマルチプロジェクション作品。

 この上映形式は、今日すでに定着しているマルチプロジェクションやループ上映の先駆けとなるもの。同時代の「インターメディア」やアート&テクノロジーと共鳴して、映像が本来的にもっている多様性を再発見することが目指された。

飯村隆彦 リリパット王国舞踏会 1964/66 ダブル・プロジェクション(16ミリフィルム) 個人蔵
前衛作家・風倉匠の日常的動作が、いくつかの断片によって構成されている作品。

 国際的に関心が高まりつつある日本のエクスパンデッド・シネマ。本展ではその独自性と先見性に注目し、当時の実験を現代の技術で再現する試みを行う。さらに、海外作家や、「エクスパンデッド・シネマ」が多く出品されたモントリオール万博(67年)といった関連資料も紹介し、歴史を参照しながら「エクスパンデッド・シネマ」について再考する。

 出品予定作家は、飯村隆彦、シュウゾウ・アヅチ・ガリバー、おおえまさのり、松本俊夫、城之内元晴、真鍋博、佐々木美智子ほか。

 未来の映像の可能性を探る、刺激的な展示に注目したい。

編集部

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