福岡県に生まれた吉田博(1876〜1950)は、10代半ばで画才を見込まれ上京。94年に小山正太郎の洋画塾不同舎に入門し、99年には渡米して作品展を開催した。
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日本よりも早くから欧米で評価されてきた吉田。水彩画や油彩画といった幅広い作品のなかでも、とりわけ人気なのが、洋画の描写と浮世絵版画の技法を融合させた、独自の木版画だ。山岳画家としても知られた吉田の、自然への真摯なまなざしと確かな技術に基づく作品は、GHQのダグラス・マッカーサーやダイアナ妃、精神医学者フロイトをも魅了した。
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本展は、そんな吉田の画業を6つの章に分けて紹介。山野を掛け巡りながら写生をしていた少年時代から、さまざまな媒体を経て木版画へと至った後半生、1950年に亡くなるまでの作品を、一挙に公開する。日本近代絵画史にその名を残した作家の全貌に迫る、充実した内容の展示となっている。