蜷川実花やアレック・ソスの個展から特別展「琉球」まで。今週末に見たい展覧会ベスト7

今週開幕した/閉幕する展覧会のなかから、とくに注目したい7つをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

特別展「琉球」の展示風景より、国宝《玉冠(たまんちゃーぶい)[付簪(つけたりかんざし)]》(第二尚氏時代、18〜19世紀)と国宝《赤地龍瑞雲嶮山文様繻珍唐衣裳》(第二尚氏時代、18〜19世紀)

アール・デコ様式の装飾との共演。「蜷川実花 瞬く光の庭」(東京都庭園美術館)

 現代日本を代表する写真家・映画監督として、独自のスタイルで知られている蜷川実花。そのコロナ禍以降に制作された最新の植物の写真と映像作品を紹介する展覧会「蜷川実花 瞬く光の庭」が東京都庭園美術館で開催される。

展示風景より

 本展では、蜷川がコロナ禍中に国内各地で撮影した膨大な写真のなかから厳選された作品をはじめ、本展のために東京都庭園美術館の庭園で撮り下ろした作品などの最新作が展示。写真作品のほか、作品世界に包み込まれるような映像インスタレーションを体感することもできる。

 光に満ち溢れる蜷川の作品と、重要文化財に指定されている東京都庭園美術館のアール・デコ様式の装飾との共演を堪能してほしい。

会期:2022年6月25日〜9月4日
会場:東京都庭園美術館
住所:東京都港区白金台5–21–9
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし7月18日は開館、7月19日は休館)
料金:一般 1400円 / 大学生(専修・各種専門学校含む) 1120円 / 中・高校生・65歳以上 700円

アメリカ現代写真を牽引する写真家。「アレック・ソス Gathered Leaves」(神奈川県立近代美術館 葉山)

 緻密なコンセプトに基づいたプロジェクトとして旅を重ね、自然や人々をとらえた作品で国際的に高い評価を受けている写真家、アレック・ソス。その日本国内の美術館での初個展「アレック・ソス Gathered Leaves」が神奈川県立近代美術館 葉山で始まる。

アレック・ソス 2008_08zl0047〈Broken Manual〉より 2008 © Alec Soth, courtesy LOOCK Galerie, Berlin

 本展は、アメリカを題材とする代表作「Sleeping by the Mississippi」「NIAGARA」「Broken Manual」「Songbook」に、最新作「A Pound of Pictures」を加えた5つのシリーズから葉山館の展示空間に合わせて選ばれた約80点で構成。モノクロームの大型写真シリーズ「Songbook」から選定された、ソスの多面的な理解につながる10点も本展の見どころのひとつだ。

 ドキュメンタリー写真の手法を継承しながらも独自の詩的な静謐さを湛える作品で、現代アートシーンにおいて高く評価されているソス。その表現の多様性と連続性を体感できる機会をお見逃しなく。

会期:: 2022年6月25日〜10月10日
会場:神奈川県立近代美術館 葉山
住所:神奈川県三浦郡葉山町一色2208-1
電話番号:046-875-2800 
開館時間:9:30〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:月(ただし7月18日、9月19日、 10月10日は開館) 
料金:一般 1200円 / 20歳未満・学生 1050円 / 65歳以上 600円 / 高校生 100円

画家・舞台美術家の全貌に迫る。「生誕100年 朝倉摂展」(練馬区立美術館)

 画家・舞台美術家として活躍した朝倉摂(あさくら・せつ、1922〜2014)の全貌に迫る、初めての本格的な回顧展「生誕100年 朝倉摂展」が、6月26日より練馬区立美術館でスタートする。

展示風景より

 彫刻家・朝倉文夫(1883〜1964)の長女として東京・谷中に生まれた朝倉摂。17歳から日本画家・伊東深水に学び、モダンな人物像を洗練された色彩感覚で描き出し、若くしてその才能を認められた。戦後は、パブロ・ピカソやベン・シャーンなど海外作家の研究を通して新しい絵画表現を模索し、60年代半ば以降は舞台美術へと活動の比重を移した。

 本展では、これまでほとんど知られていなかった朝倉の絵画作品40余点と素描に加え、舞台美術の模型やデザイン画、資料、絵本原画を含む約200点を展示し、その多彩な魅力を紹介する。

会期:2022年6月26日~8月14日
会場:練馬区立美術館
住所:東京都練馬区貫井1-36-16
電話番号:03-3577-1821
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:月(7月18日は開館)、7月19日 
料金:一般 1000円 / 65~74歳、大学・高校生 800円 / 75歳以上、中学生以下無料

ふたりの印象派画家の生涯を追う。「シダネルとマルタン展 最後の印象派」(SOMPO美術館)

 フランスで19世紀末から20世紀前半にかけて活動したアンリ・ル・シダネル(1862〜1939)とアンリ・マルタン(1860〜1943)。ふたりの画家をあわせて紹介する初の展覧会「シダネルとマルタン展 最後の印象派」が、新宿のSOMPO美術館で6月26日まで開催されている。

展示風景より、右がアンリ・マルタン《腰掛ける少女》(1904以前)

 本展は9章構成で、シダネルとマルタンが画家としての名声を高め、交友を深めながら画風を確立していった生涯をたどるように紹介する展覧会だ。両者の同時代性や共通点とともに、その差異にも着目した展示が目指されている。

 印象派の系譜を引き継ぎながら独自の道を切り開いていったシダネルとマルタン。ふたりの作家のたしかな足取りを、本展で感じてみてはいかがだろうか。

会期:2022年3月26日〜6月26日
会場:SOMPO美術館
住所:東京都新宿区西新宿1-26-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜18:00
料金:一般 1600円 / 大学生 1100円 / 高校生以下無料

過去最大規模で琉球の歴史と文化を紐解く。特別展「琉球」(東京国立博物館)

 沖縄の返還50年を記念し、琉球の歴史と文化を紐解く過去最大規模の特別展「琉球」が、6月26日まで上野の東京国立博物館で開催されている。

展示風景より、国宝《玉冠(たまんちゃーぶい)[付簪(つけたりかんざし)]》(第二尚氏時代、18〜19世紀)と国宝《赤地龍瑞雲嶮山文様繻珍唐衣裳》(第二尚氏時代、18〜19世紀)

 展覧会は5章構成で、東京国立博物館と九州国立博物館の2館のコレクションを中心に、九州・沖縄地区の博物館が所蔵するものも含めて、国宝を含む400点近い品々が一堂に集結。琉球列島の先史文化から琉球王国の隆盛、いまも受け継がれる祈りの文化などが紹介されている。

 なお、本展は7月16日より九州国立博物館に巡回予定。琉球の文化財を紹介するだけでなく、困難を乗り越えて文化や伝統を継承しようとした、沖縄の人々の営みまでが垣間見える展示をチェックしてほしい。

会期:2022年5月3日〜6月26日
会場:東京国立博物館
住所:東京台東区上野公園13-9
電話番号:050-5541-8600
開館時間:9:30〜17:30
料金:一般 2100円 / 大学生 1300円 / 高校生 900円

沖縄出身アーティストの視点から「沖縄」を考える。「PARADISE OKINAWA」(MISA SHIN GALLERY)

 沖縄出身のアーティスト、照屋勇賢、石垣克子、伊波リンダ、上原沙也加にフォーカスしたグループ展「PARADISE OKINAWA」が南麻布のMISA SHIN GALLERYで開幕した。

照屋勇賢 左から《Untitled》《Untitled》(ともに2018)

 観光客の激増、開発の波と自然環境の破壊への危惧、米軍基地に派生する問題など、復帰後の50年で沖縄の風景は一変し、いまも変化のなかにある。本展では4人のアーティストが、それぞれの手法と多様な視点で、沖縄の過去、現在、未来を考える。

 いまベルリンを拠点とする照屋勇賢は、折り曲げて凹凸を施した紙に文字を切り込んだ水彩レリーフなど沖縄で制作した作品を発表。石垣克子は、米軍基地や米軍用の住宅、戦後変化をしてきた建物や街並みなど沖縄の風景を描きとどめようと試みる。伊波リンダは、演出的な方法で沖縄を表現した「矛盾の中で眠る」シリーズ、沖縄に駐留するアメリカ兵の日常やポートレイトを撮影した「Design of Okinawa」シリーズなどを展示。沖縄島の生活の場としての風景をとらえており、淡々とした写真の断面に重層的に存在する上原沙也加の「The Others」シリーズを見ることもできる。

会期:2022年6月23日~8月6日
会場:MISA SHIN GALLERY
住所:東京都港区南麻布3-9-11 パインコーストハイツ1階
電話番号:03-6450-2334
開館時間:12:00~19:00 
休館日:日、月、祝 
料金:無料

アート、ファッション、ミュージックシーンで活躍するアーティスト。オートモアイ「I wanna meet once again if like that dream」(SAI)

 アートピースの制作のみならず、ファッションやミュージックシーンでも幅広く活動しているアーティスト・オートモアイによる個展「I wanna meet once again if like that dream」が、6月25日に渋谷のSAIでスタートする。

メインビジュアル

 オートモアイは2015年より、モノクロでの作品制作を開始。18年からはカラーも多用し、「匿名」というキーワードのもと、表情が描かれない人々が登場する世界観で知られる。極めて客観的でもありながら、非常にパーソナルな情景にも見えてくるその作風は、人間同士の関係性や、作品と鑑賞者の関係性など、必要な情報が削ぎ落とされているからこそ見えてくる景色と情景を提示する。

 本展はすべて新作で構成。会場を囲む、アーティストが近年より力を入れ制作する油彩の平面作品群が世界観への没入を仰ぎ、作品にじっくりと向き合うことができる空間が構築される。

会期:2022年6月25日~7月17日
会場:SAI
住所:東京都渋谷区神宮前6-20-10 MIYASHITA PARK SOUTH 3階
電話番号:03-6712-5706
開館時間:11:00~20:00 
休館日:会期中無休 
料金:無料

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