この夏、宮内庁三の丸尚蔵館収蔵の名品、優品と東京藝大コレクションを加えた計82件を通して日本美術をわかりやすく紹介する特別展「日本美術をひも解く─皇室、美の玉手箱」が、東京藝術大学大学美術館で開催される。会期は8月6日〜9月25日。
日本美術をわかりやすく「ひも解く」ことを主眼とする本展は、4つのテーマで構成されている。
第1章「文字からはじまる日本の美」には、平安時代三跡のひとり・小野道風の国宝《屏風土代》などが並ぶ。物語や和歌を発展させ、日本美術の土壌を築いた日本の文字が、そこにあった日本人の感性と合わせて提示される。
続く第2章「人と物語の共演」では、《源氏物語図屏風》に加え、国宝《蒙古襲来絵詞》、国宝《春日権現験記絵》(巻四、五のみ出品)などの有名な国宝を鑑賞できる。
第3章「生き物わくわく」では、桃山時代を代表する画家・狩野永徳の国宝《唐獅子図屏風》(右隻)や高橋由一の重要文化財《鮭》、日本近代彫刻の祖・高村光雲の《矮鶏置物》に出会う。鑑賞を通して、日本美術において作家たちが命ある動物とどのように向き合い、これを表現してきたのかを感じることができるだろう。
第4章「風景に心を寄せる」では、古来より畏怖の念を抱かせてきた自然を表現した作品が堪能できる。 海北友松が伝統的画題「浜松図」に伝統的なやまと絵技法を持って挑んだ《浜松図屏風》の持つ品格は、ぜひ会場で体感してほしい。
なお《屏風土代》《蒙古襲来絵詞》《春日権現験記絵》《唐獅子図屏風》(右隻)はいずれも宮内庁三の丸尚蔵館所蔵の国宝である。
本展ではまた、同じく宮内庁三の丸尚蔵館が所蔵する国宝《動植綵絵》もその目で見ることが叶う。同作は伊藤若冲が生命の美しさを約10年にわたって表現した大作。この《動植綵絵》全30幅のうち、《向日葵雄鶏図》や70種類近くの虫を画面いっぱいに描いた《池辺群虫図》など10幅が一堂に会する。
美術を保護・奨励してきた皇室が伝えてきた多くの名品、優品と、最初に体系的な日本美術史の講義を行った東京美術学校を前身とする東京藝術大学のコラボレーションによる本展は、日本美術を味わい理解するこの上ない機会となるだろう。
なお、会期中は日程よって展示される作品が異なる。詳細は公式サイトを確認してほしい。