2020年以降、私たちの日常を一変させた新型コロナウイルス感染症。 このパンデンミック以降の「ウェルビーイング」はいかなるものか。現代アートの眼を通して問う展覧会「地球がまわる音を聴く:パンデンミック以降のウェルビーイング」が、6月29日〜11月6日に東京・六本木の森美術館で開催される。
展覧会タイトルにある「地球がまわる音を聴く」は、オノ・ヨーコのインストラクション・アート(*)から引用された言葉。
出展アーティストは、オノ・ヨーコをはじめ、「なおす」をテーマに活動する⻘野文昭、花粉や蜜蝋、牛乳や米などを用いたインスタレーションと立体作品で知られるヴォルフガング・ライプら国内外のアーティスト16名。
会場は、絵画、彫刻、インスタレーション、映像、写真といった多様な作品によって構成される。
広大かつ複雑な世界を、ギド・ファン・デア・ウェルヴェの映像作品《第9番 世界と一緒に回らなかった日》を通して省みるもの。
飯山由貴はドメスティック・バイオレンス(DV)をテーマに、小泉明郎は催眠術を用いた新作をそれぞれ発表。ともに鑑賞者に認識の相対性を意識させ、異なる視座から日常を見つめることを促す作品となっている。
具体美術協会にゆかりのある堀尾貞治と堀尾昭子や、「現代のユトリロ」と呼ばれたパリの画家ロベール・クートラスの作品も展示。表現からあふれる衝動やエネルギーは、「生きるとは何か」という膨大な問いに向かう活力を与える。
ツァイ・チャウエイの《子宮とダイヤモンド》は、鏡に映り込む私たちの存在が広い宇宙の一部にすぎないこと実感させると同時に、それらとつながっている感覚を呼び起こす。
自然と人間、個人と社会、家族、繰り返される日常、精神性界、生と死など、私たちの生や実存と不可分なテーマを有する作品が集結している。それゆえに本展は、従来と全く異なる未来における「よく生きる」に対する想像を喚起する場となりうるだろう。
*── コンセプチュアル・アートの形式のひとつで、作家からのインストラクション(指示)そのもの、あるいはその記述自体を作品としたもの。