昨年6月、金沢21世紀美術館から徒歩3分という場所に本館を開館させた私設の現代美術館「KAMU kanazawa(カム カナザワ)」が、6つ目となるスペース「KAMU k≐k(カム ケーケー)」を12月17日にオープンさせる
「KAMU kanazawa」は開館以来、「BlackBlack」「Sky」「L」「KAMU tatami(タタミ)」を次々にオープンさせ、現代美術の作家たちを精力的に紹介してきた。
「KAMU k≐k(カム ケーケー)」は、金沢の中心地「片町」と「柿木畠」エリアを横断して立つ施設「Prego(プレーゴ)」の一角に位置するもので、高さ5メートル、幅奥行き7メートルの空間。約4年半限定の企画展示室となる。
初回を飾るのは、フードアートの分野で活躍する諏訪綾子の新作「TALISMAN in the woods(タリスマンインザウッズ)」だ。諏訪は石川県生まれ。金沢美術工芸大学卒業後、2006年よりfood creationの活動を開始し、主宰を務める。これまで欲望、好奇心、進化をテーマにした食に関する作品をパフォーミングアート、インスタレーション、ダイニングエクスペリエンスなどの手法で数多く発表。本能的な無意識の感覚に訴えることのできる表現の媒体として「食」を扱い、感情、記憶などの内在する感覚を「あじわい」で伝えることで、体験者に新たな問いや発見をもたらす作品が特徴だ。
本展は、石川県の広域に水を供給する水源地“白山”から分けてもらった多くのエッセンスを諏訪が多感覚で咀嚼。それを鑑賞者があじわい、循環を体感できるインスタレーションとなる。コロナ禍が始まった2020年に作家が「タリスマン」と名付けて制作を始めた立体作品を、白山で間伐された杉の枝葉を用い、KAMUk≐kのスケールに合わせたモニュメントとして展示する。
またその他にも白山から採取した様々なエッセンスで展示空間を満たし、私たちが日々体内に取り入れる水の循環を感じることのできる作品が展示されるという。
本展は2023年12月23日までという長期間のプロジェクトであり、展示終了後にはタリスマンを白山の土へ還し、美術館の展示と白山の自然を接続させる。
なお、プロジェクトの一環としてクラウドファンディングも実施中。諏訪の作品「タリスマン」などを手にすることができるほか、白山からのタリスマンが枯れた後にはそれらを白山に持ち寄り、作家が主催する「タリスマンを森に返すリチュアル」に参加できるというプログラムも行われる。