アートと音楽の交差点から作品を発表してきたアーティスト、クリスチャン・マークレーの日本国内初となる大規模な展覧会「クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]」が、東京都現代美術館で開催される。会期は11月20日〜2022年2月23日。
マークレーは1955年アメリカ・カリフォルニア州に生まれ。スイス・ジュネーヴで育ったあと、70 年代末にニューヨークでターンテーブルを使ったパフォーマンスで音の実験的な作品を発表し、前衛的な音楽シーンの重要人物として一躍知られるようになった。80年代以降は、即興の演奏のほか、聴覚と視覚の結びつきを探る作品を数多く生み出してきた。
本展では、視覚と聴覚の経験の等価性を追求し、ある感覚を別の感覚に置き換えることで世界を読み解こうとするマークレーのアプローチを「Translating[翻訳する/変換する]」という言葉で言い当てる。スイスとアメリカの異なる言語・文化圏を行き来しながら成長したマークレーは、過去のインタビューでこう話している。「私は言語をあまり信用しておらず、視覚的言語や音楽など、異なる記号や認識に頼る他のタイプのコミュニケーションに興味があった」(展覧会リリースより引用)。
展覧会では、コンセプチュアル・アートやパンク・ミュージックに影響を受けた初期作品から、イメージと音の情報のサンプルを組み立てた大規模なインスタレーション、そして現代社会に蔓延する不安を映し出した最新作まで、マークレーの多岐にわたる活動の全貌を紹介し、その多様で折衷的な実践を探る。
例えば、映画のシーンをサンプリングし4つの連続する画面に視聴覚作品として構成した《ビデオ・カルテット》(2002)や、英語に翻訳された日本のマンガから切りとったオノマトペの文字が動きのついたアニメーションとなり、音の大洪水のように降り注ぐ《サラウンド・サウンズ》(2014-15)などの作品を紹介し、「音を見る/イメージを聴く」という未知の体験へと鑑賞者を導く。
なお会期中には、∈Y∋、大友良英、コムアイ、巻上公一、山川冬樹らがマークレーの「グラフィック・スコア」を演奏するイベントも複数回にわたって開催。本演奏のために、ジム・オルークを中心とするバンドも結成される。