フランス人の画家、ジャン・デュビュッフェが提唱した「アール・ブリュット」や、これを美術批評家のロジャー・カーディナルが訳した「アウトサイダー・アート」という言葉は多くの人が見聞きしたことがあるだろう。しかしながらこうした言葉は、日本では「障害者アート」という福祉的な視点で取り上げられることが多い。この障害の有無や、あるいはアーティストであるか否かといった境界を取り払い、既存のカテゴリーに当てはまらない、ときには常軌を逸した表現を紹介するのがポコラート世界展「偶然と、必然と、」だ。
ポコラートとは「Place of “Core + Relation ART”」の略であり、「障害の有無に関わらず人々が出会い、相互に影響し合う場」またその「場」をつくる行為を示したもの。アーツ千代田 3331が2010年の開館時より取り組んでいるもので、 障害のある人、ない人、ア ーティストが同じ地平で表現を高め合う場を創造すべく、公募や展覧会、ワークショップ、トークイベント等を10年にわたって行ってきた。
このポコラート事業の10周年を記念し、アーツ千代田 3331で世界22ヶ国の50作家が参加する展覧会として開催されるのが本展。会期は7月16日〜9月5日。
同展のキュレーションを担うのは、芸術文化人類学を専門とするキュレーター・嘉納礼奈。嘉納が約1年を費やして世界23都市をリサーチし、会場には240点余の作品が集結。海外から出展する35名の作家のうち、28名が日本初公開となる。
展示は、自己の内面や身近な事象から、作者を取り巻く世界の成り立ち、過去の記憶や空想の世界など、6つのテーマで構成。国籍や年齢、性別、障害の有無、美術の枠組みなど、様々なボーダーを超越する作品の数々を堪能したい。