モーゼスおばあさん(グランマ・モーゼス)の愛称で親しまれる、アメリカの国民的画家アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス(1860~1961)。その作品世界を紹介する展覧会「グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生」が、世田谷美術館(2021年11月20日~2022年2月27日)など全国5都市で開催される。
無名の農婦だったグランマ・モーゼスは、70代で本格的に絵を描き始め、80歳のときニューヨークで初めての個展を開催。身近な出来事や自然へのあたたかな眼差しを写した作風とそのユニークなキャリアは、当時の大恐慌や第2次世界大戦を経験し疲弊していたアメリカの人々の心をとらえ、一躍人気作家となった。日本でも1980年代にはじめて紹介されて以来、根強いファンが多くいることで知られている。
生誕160年を記念して企画された本展は、全4章で構成。最初期の作品から100歳で描いた絶筆、そして愛用品や関連資料まで、初来日作品を含む約130点を展示する。
ニューヨーク州とヴァーモント州にまたがる田園と、その土地の人々の日常を描いたモーゼス。第1章「アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス」では、縁のある場所や人生の転機となった作品、絵画の前に手がけていた刺繍絵などを紹介。第2章「仕事と幸せと」では、当時の多くの人々の集ったキルトや石鹸、ロウソクづくり、作物の収穫、結婚式や引っ越しなどの行事を垣間見ることができる。
第3章「季節ごとのお祝い」では、「毎日ほとんど変化がないけれど、季節だけは移ろう」と語ったモーゼスが描く、特別な季節の行事を展覧。そして第4章「美しき世界」では、モーゼスが100歳で描き絶筆となった《虹》のほか、豊かな自然を題材とした作品を紹介する。
加えて、これまでアメリカ国外に出品されたことのない貴重なテーブルも展示。実際にモーゼスが絵画の制作時に使っていたもので、両脇の板には自身による風景が施されている。本展は、自然や素朴な暮らしを愛し、素敵な100年を生きたグランマ・モーゼスの世界を知るまたとない機会となる。